なぜイスラエルを提訴?南アの歴史家が語るアパルトヘイトとガザ封鎖
イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃がジェノサイド(集団殺害)にあたるとして、南アフリカが軍事作戦の停止などを求めて提訴した訴訟で、国際司法裁判所(ICJ)は26日、イスラエルにジェノサイド行為を防ぐための措置をとるように命じました。なぜガザから遠く離れた南アが、イスラエルを訴えたのでしょうか。南アの少数民族の出身で、ケープタウン大学の歴史家タリク・ジェンキンス氏に聞きました。
――南アとパレスチナには、どのようなつながりがあるのでしょうか。
南アは歴史的にパレスチナとの結びつきがあります。南アで1990年代まで続いたアパルトヘイト(人種隔離)政策の撤廃運動のなかで、双方の指導者たちは共鳴してきました。
初代黒人大統領のネルソン・マンデラは「パレスチナの人々の自決のための闘いを支援し、地域の平和、安全、友好のための努力を支援するため、我々みんながさらに行動する必要がある」と語っています。パレスチナ人が自由にならない限り、我々アフリカ人は自由になれない、という思いが込められていました。
かつて「テロリスト」と呼ばれたマンデラ
――なぜ、両者は共鳴していたのでしょうか。
最大の共通点は、土地をめぐる歴史的な問題です。アパルトヘイトの根源には、白人が入植地を造るために先住民を追い出すという植民地支配の考え方が基礎にあります。アパルトヘイト下では、人口の1割の白人が8割超の土地をもち、非白人は残りの土地に押し込められました。
飛行機で上空を飛ぶと、今でも南アのタウンシップ(旧黒人居住区)と、ガザは同じように見えるでしょう。出入りを制限し、境界は厳重に管理されている。特別な隔離政策が、少人数で多数の人たちを支配することを可能にしています。
罪のない人々を閉鎖的な環境に押し込めると何が起きるのか。その「パンドラの箱」が開くと、どうなるのか。タリク氏は「崩壊と爆発」の危険性について説明します。
マンデラから続くパレスチナ…
イスラエル・パレスチナ問題
イスラム組織ハマスが2023年10月7日、イスラエルに大規模攻撃を行いました。イスラエルは報復としてハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区に攻撃を始めました。最新のニュースや解説をお届けします。[もっと見る]