キーウ市長が見据える戦争の行方 侵攻700日、独占インタビュー
ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まって700日となる1月24日、キーウのビタリ・クリチコ市長(52)が朝日新聞の取材に応じました。キーウではロシア軍によるミサイル、ドローン(無人航空機)攻撃が相次ぎ、昨年末以来、死傷者が多く出ています。それでも、「戦い続けるしかない」と話すクリチコ氏のインタビューを2回に分けて伝えます。
当初、「ウクライナはもって数日」と言われていた
――これまでの700日間のウクライナ人、ウクライナ軍の戦いをどう評価しますか。
700日と言えば、ほぼ2年です。この戦争が始まった当初、世界中の専門家が言っていたのは「世界で最も大きく、最も強い軍の一つであるロシア軍に対して、ウクライナはもっても数日、あるいは数週間だろう」ということでした。
ビタリ・クリチコ
1971年7月、現在のキルギス生まれ。ボクシング・ヘビー級の元世界王者。2006年にキーウ市議になり、12年の議会(国会)選挙では、自らが率いる野党「民主改革連合」(ウダル)が第3党に躍進した。14年に3度目の立候補でキーウ市長に当選。ウクライナ語のほか、ロシア語や英語、ドイツ語を話す。
それが、まもなく戦争が始まって2年です。私たちは祖国の防衛に成功しています。
ロシアはウクライナを占領しようと試み、いまは困難な戦いを強いられている。ウクライナを支援してくれている全ての友人に非常に感謝しています。私たちには支援が必要であり、状況は簡単ではありません。ロシアを過小評価したくはないし、かといって過大評価したくもありません。
彼らはこの戦争で大きな問題を抱えており、(プーチン)大統領は北朝鮮に行って、武器を請いました。ウクライナと戦うのに、十分な武器がないからです。
ただ、私たちにとっても(この戦争は)困難なものであり、大きな挑戦です。
こうした困難を予想してはいませんでしたが、私たちは戦うしかない。それ以外に選択肢はありません。なぜならば、私たちの領土、都市、夢がかかっているからです。
ロシアがウクライナを独立国家として認めることは決してありません。「ウクライナはロシアの一部だ」と言います。一方で私たちは民主主義の未来のために戦っています。ロシアの一部になんかなりたくない。欧州の一部でありたいし、そのために戦っているのです。
ロシアはいま、小休止が必要
――ロシアは昨年末から都市部への攻撃を強め、キーウでは昨日(1月23日)も20人以上が負傷する攻撃がありました。
かつてないほどの困難を抱えていた1年前の冬よりは、いまは安全です。当時は非常に重要なインフラ施設がロシアによる攻撃の被害を受け、大きなエネルギー不足が生じました。公共交通機関も初めてストップしてしまいました。今年は対ミサイルシステムが強化され、ほとんどのミサイルや自爆型ドローンを撃墜することができています。ただ、対ミサイルシステムの数が少なく、一部の街に被害が出てしまっています。
――「戦い続けるしかない」とのことですが、ウクライナ側として、それ以外の「プランB」は検討すべきでしょうか。
ロシアは「妥協点、解決策を見つけよう」と口にするという(交渉を装った)ゲームを仕掛けています。ロシアに多くの領土を譲渡してしまう形で妥協することは、公正ではありません。ロシアにはいま、小休止が必要なのでしょう。私は、しばらくしたらロシアがまた攻撃を激化させると確信しています。
彼らの主な標的はキーウです。いまのところ、彼らにとって別の選択肢は見当たりません。私たちは戦わなければならないし、強くならないといけません。
記事後半では、クリチコ市長が戦争があとどれくらい続くと予想するのか、「支援疲れ」に対する考えを聞きます。
――シンプルな質問をします。あなたは、「勝利」と「平和」をどのように定義しますか。
……難しい質問ですね。「勝…