第2回「戦車移転」で急増したサイバー攻撃 国民が今も抱く17年前の記憶

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タリン=藤原学思

連載 ロシアの隣で エストニアの危機感②:旧ソ連時代の戦車

 タクシー運転手が英語の単語を並べて話す。「目的地、本当に、ここか」。間違いない。確かにここだ。

 ロシアと国境を接するエストニア東部ナルバ。12月中旬、市の中心部から北に約6キロの場所を訪れた。

 片側1車線の道路沿い。木々の向こうに川が流れる。その先はロシアだ。

【連載】ロシアの隣で エストニアの危機感

ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まって、2月24日で丸2年を迎えます。ロシアの隣国であるということは、どういう意味を持つのか。エストニアの人々の思いや、ここ2年で起きた変化を通じて伝えます。

 市内の観光名所を案内する掲示板が、脇にぽつんと立っている。ただ、一帯は雪に厚く覆われ、何があったのかを示すものは、もはや残っていない。

旧ソ連へのノスタルジー

 実は1970年から、旧ソ連時代の戦車「T34」がここに展示されていた。ロシア側から見れば「ナチスとの戦いの象徴」、一方でエストニア側から見れば「占領の象徴」だった。

 だが、ロシアがウクライナに全面侵攻を始めたことを受け、2022年夏に撤去された。一部の住民はその動きに反対運動を展開し、しばらくの間、戦車の跡地にはキャンドルや花束が添えられた。

 ナルバの約5万4千人の住民は84%が「ロシア系」。旧ソ連に対するノスタルジーはなお、色濃い。

 では、この「T34」はどこ…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論
  • commentatorHeader
    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2024年1月28日11時0分 投稿
    【視点】

    エストニア、特にナルヴァという地名は、宮崎駿ファンにとって馴染みがなくもない。第二次世界大戦、独ソ戦の後半にてナルヴァの周辺は激しい攻防戦の舞台となり、そこで戦ったドイツ軍のティーガー戦車の乗員の手記を、彼が『泥まみれの虎』(大日本絵画 刊

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