「快適なトイレ、ぜいたくではない」 能登でも課題、専門家が訴え

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聞き手・丹治翔

 能登半島地震では、広範囲の断水が続いています。体育館や集会所などの「1次避難所」に身を寄せる人も24日時点で約1万1千人います。

 避難生活での困りごとになるのがトイレです。SNSを通じて読者と記者がつながる#ニュース4U取材班に、阪神・淡路大震災の被災経験者から「大変なのはトイレ。環境の悲惨さと重要性を伝えて」という投稿が届きました。

 災害時のトイレについて、何が問題となるのか。必要な備えは。NPO法人「日本トイレ研究所」の加藤篤代表理事に聞きました。

トイレも初動が大事

 災害時のトイレ問題は、水分や食料より早い初動対応が求められます。断水などで水が流れないときにいつも通り排泄(はいせつ)をしてしまうと、汚物がたまり、衛生面が悪化する一方だからです。

 元日に発生した地震は、能登半島の生命線となる道路の寸断で交通アクセスが極端に限られました。プッシュ型や災害時協定などの支援は、お正月という時期的にも半島という地理的にも初動が厳しかったのではないでしょうか。

 その結果、便器が排泄物でいっぱいに。悪臭が立ちこめるトイレが相次ぎました。備えがなければ、地面に穴を掘って排泄せざるを得ません。人権も個人の尊厳もなく、そうするしかない状況を強いてしまいました。

 再認識したのは、災害時におけるトイレの確保・管理計画や備えがない状態で、現場対応するのは極めて困難だということです。アドリブ対応は無理です。

不衛生なトイレに三つの問題

 トイレが不衛生になると、三つの問題が起きます。

 一つは、感染症。すでに被災地では、ノロウイルスなどを含む消化器感染症が確認されています。

 次に、トイレを控える動きです。飲食を我慢するようになるので、エコノミークラス症候群や誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクが高まり、災害関連死につながるおそれがあります。

 最後は精神面への影響です。トイレはひとりっきりになれる貴重な場所。そこが快適に使えないと、ストレスもたまります。人間関係がうまくいかなくなり、避難先の治安悪化にもつながりかねません。

 袋式の「携帯トイレ」などを備え、災害時にいち早くトイレの対応をすることは、感染症や関連死を防ぎ、避難生活を支えるメンタルを保つためにも必要です。トイレを設備としてとらえるのではなく、命に関わることと理解してほしいと思いを強くしました。

浸透感じた「携帯トイレ」

 一方、この10年で啓発して…

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この記事を書いた人
丹治翔
ネットワーク報道本部|双方向企画担当
専門・関心分野
メディア・SNS、スタートアップ、人口減社会
能登半島地震(2024年)

能登半島地震(2024年)

2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。地震をめぐる最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]