郵便局長の不正多発、昨年も8件 経費詐取、酒気帯び運転、盗撮も…

藤田知也

 郵便局長による犯罪や不正が止まらない。日本郵便が公表した局長の不祥事は昨年1年間で6件あり、ほかに女性を狙う盗撮事案も発覚した。日本郵便は「再発防止」を唱えるが、打つ手が乏しいのが実情だ。

 朝日新聞が日本郵便13支社の発表内容を集計した。局長数は全国で約2万人。

 以前は社員の不正などを公表しないことも多かった日本郵便だが、2019年末に総務省の行政指導を受け、原則すべてを公表する方針に変えた。局長の不祥事はその後、年3~5件を公表。これとは別に21~22年は顧客情報や物品の政治流用で200人以上の局長が社内処分を受けた。

 昨年公表の6件は、架空の領収書などで経費をだまし取る例がめだち、無免許・酒気帯び運転で逮捕された局長もいた。退職済みの1人を除き、4人が解雇、残る1人は処分待ちだ。

 郵便局内で女性を狙う盗撮・盗撮未遂容疑で逮捕された局長も少なくとも2人いた。被害者への配慮などを理由に日本郵便は公表していないが、同様の被害は毎年のように発覚。「安心して働ける環境が整っていない」(近畿地方の女性社員)との声も出ている。

 日本郵便は不祥事のたびに「指導の徹底」「適切な再発防止策」に努めると繰り返してきたが、これまで効果は限定的だ。

 不正が相次ぐ背景には、局長のなり手不足もある。

 現役局長でつくる任意団体の全国郵便局長会も「局長犯罪の撲滅」を掲げ、幹部による点検や監視を強めてきた。ただ、日本郵便では局長会に入らないと出世が難しく、局長会では多額の費用負担や自民党入党、政治活動への参加などを求める。こうした人事をとりまく慣習自体が「優秀な社員の採用の妨げとなっている」(九州地方の局長)との見方もある。

 日本郵便は取材に、相次ぐ局長犯罪について「信用第一の局長が業務内外で犯罪を発生させて遺憾だ。指導や点検で犯罪防止に努める」(広報)としている。(藤田知也)…

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