覚悟して足踏み入れた夜 被災のEIZO七尾工場、再開までの22日

有料記事

中村建太

 駅のホームで乗客の乗り降りを確認したり、船舶で海上航路の映像を見たりするために使う業務用ディスプレー。その大手の「EIZO」(石川県白山市)の七尾工場(同県七尾市)が22日、稼働を再開した。能登半島地震で被災してから22日目。工場が一丸となった復旧までを追った。

 傾いた壁を支える鉄骨の足場、外れた天井を覆う養生シート――。

 ディスプレーの組み立てを担う子会社「EIZOエムエス七尾工場」は、まだ地震の傷痕が残る。

 22日午前9時、始業を告げるチャイムが鳴った。

 「おはようございます。本日もよろしくお願いします」

 この日に動く二つの製造ラインの従業員が朝礼を済ませた。電子回路基板やディスプレーが手際よく組み立てられていく。

 従業員らに声をかけて回る岩本敏さん(63)は感慨深げだ。工場長にあたる製造2課長を務めている。

 「正直、再開にはもっとかかると思っていた」

 帰省していた長女夫婦と孫、妻らと団欒(だんらん)していた元日は震度6強の揺れで一変した。

 家族はみな無事だったが、安心する間もなく、工場が気にかかった。

 岩本さんは七尾市で生まれ、育ち、今も自宅を構えている。七尾工場には、1988年の入社以来、通算約24年、身を置いてきた。工場を取り仕切る立場になって8年目。159人の従業員は「教え子」のような存在だ。

 夜、工場に向かった。

 いつもは車で20分の道に2…

この記事は有料記事です。残り1018文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
中村建太
経済部|国土交通省担当
専門・関心分野
運輸政策・産業、ものづくり、地方格差
能登半島地震(2024年)

能登半島地震(2024年)

2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。地震をめぐる最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]