先天性心疾患で生まれた赤ちゃんが、医療の進歩を背景に大人になれるようになってきた。一方、どのようにして適切な医療を継続して届けるか、が課題になっている。
新生児の約100人に1人には、何らかの心臓の病気があるとされる。必ずしも手術を必要としないものから、心室が一つしかないなど複雑な手術が必要なものまで、いくつかのタイプが知られている。
かつて、先天性心疾患の患者の多くは大人になる前に亡くなっていた。1960年代ごろから、手術や、薬による管理が進歩して、生存率は大きく向上。いまでは、90%以上が15歳以上になれる。
大人になった患者の総数は増えている。97年に約32万人だった15歳以上の患者が、現在は推定で50万人を超え、さらに増えていくとされる。
近年の課題は、大人になった患者に、適切な医療をどう届けるかだ。
再手術が必要な人「相当数いる」
日本成人先天性心疾患学会の赤木禎治(あかぎていじ)理事長(64)は「昔は、手術を『根治術』と呼んでいた。でも現実には、大人になった患者さんの中には、再手術が必要な人が相当数います」と指摘する。
手術した心臓は不整脈が起きやすく、血液の逆流を防ぐ人工弁などに不具合があると心不全にもつながる。
しかし、日常生活に支障がないことや転居がきっかけで、通院をやめる成人患者も多くいるという。
赤木さんは「心不全が進行すると治療は難しくなり、突然死のおそれもある。いま元気な患者さんでも、専門医がいる病院で定期的な診察を受けてほしい」と訴える。
学会は専門医や認定施設を整備し、2023年には全都道府県に最低1カ所は、認定施設がある状態になったという。
「自分の病気、十分知って」
横浜市立大などは昨年、15…