LRTの将来、読者と語る 記者が講演会

石原剛文
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 朝日新聞宇都宮総局は20日、取材テーマについて記者と読者が語り合う講演会を宇都宮市で開いた。テーマは昨年8月に同市と栃木県芳賀町を結び開業した次世代型路面電車(LRT)。現状と将来、課題について、取材を続ける石原剛文記者が参加者と意見交換した。

 LRTは国内では75年ぶりとなる路面電車の新路線。石原記者は、静か▽バリアフリー▽輸送力が大きい――といった特徴を説明しながら、国内で初めて本格的なLRTを導入した富山市の事例も紹介。また、停留場予定地を盛り込んだ基本計画案をつくりながら、導入を中止した堺市の例など、各地の導入案についても解説した。

 宇都宮市―芳賀町間のLRTは利用者が150万人に達し、土日祝日は需要予測を大幅に上回っている。開業したJR宇都宮駅東口側路線に続き、2030年代前半には西口側路線の開業も目指している。一方で、バスで移動できることなどを理由に、地元では根強い反対の声もある。

 石原記者は事故を防ぐ安全対策の徹底や、安定した利用者数の確保の必要性について触れながら、「一時的に脚光を浴びるのではなく、コストを抑えながら長期的に市民に定着していくことが大切。利用者に必要とされるための、たゆまぬ改善が求められる」などと語った。

 講演会には県内外から参加があり、「西口側延伸は必要か」「LRTのルートはなぜその場所を通るのか」「東口側路線の事業費は当初の1・5倍になった。西口側路線の事業費がどうなるのか、報道機関としてよく見ながら報告してほしい」などの質問や意見が出た。

LRT、海外からも高い関心 16カ国の政府や自治体職員視察

 18日には、海外の自治体職員らが宇都宮を訪れ、宇都宮市―栃木県芳賀町を結ぶ次世代型路面電車(LRT)を視察した。参加者はLRTの現状や将来像について説明を受け、車両や停留場を見学。乗車方法や定員などについて質問が相次いだ。

 視察は国際協力機構(JICA)が実施し、アルバニアバングラデシュ、ボスニア・ヘルツェゴビナなど16カ国の地方自治体や政府の職員が参加した。都市交通をテーマに、東京都内などでバスや地下鉄を約1カ月間視察する内容で、宇都宮市ではLRTの説明と乗車が組み込まれた。

 JR宇都宮駅西口の「交通未来都市うつのみやオープンスクエア」で、担当者が画面に映し出された資料をもとにLRT開業までの経緯や現状を説明。すべての停留場がバリアフリー設計という設備面のほか、フランス・ストラスブールのLRTを参考にした乗降システムや車両デザイン、JR宇都宮駅を高架で渡り、上河原交差点付近で地上に下りる西口路線の検討状況などについてデータを示した。

 説明会の後、参加者らは宇都宮駅東口停留場からLRTに乗車。最大のトランジットセンター(他の交通機関との乗り換え場所)がある清原地区市民センター前停留場に移動し、駐車場などを視察した。

 参加者の関心は高く、「観光客が便利になるようにクレジットカードは使えないのか」「駐車場に太陽光パネル付き屋根はつけないのか」「座る場所は何人分あるのか」などと予定時間を超えて質問が続いた。

 マリー・サイモンさん(35)はパプアニューギニアから参加した。母国での主な移動手段はバスや車、タクシーといい、「LRTに乗ったのは初めて。乗り心地がよかった。一度に約160人が移動できることが印象的だった」と話していた。(石原剛文)

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