桃田賢斗「今の自分の方が好き」 過ちと向き合い捨てた天才型の思考
激動の10年間だった。
今月初めに日本代表としてのキャリアに終止符を打ったバドミントン男子シングルスで元世界王者の桃田賢斗(29)。日本男子初の世界選手権優勝や世界ランキング1位など輝かしい実績を残した一方、違法賭博での出場停止や、交通事故での大けがにより、オリンピック(五輪)でのメダルには届かなかった。
どん底の日々も、そこから再起した過程も「今なら全部さらけ出せる」。朝日新聞の単独インタビューで思いを語った。
賭博問題、初心に帰った
――代表活動を終えた今、どんな気持ちですか。
「10年間代表で活動して、下から上まで、いろいろな経験をしたと思います。今は本当にやりきったなと肩の荷が下りてすっきりした感じですね」
――栄光も挫折も経験した10年間。ターニングポイントを挙げるならどこですか。
「2016年の賭博問題がなくて、あのままだったら、本当にろくでもない人間になってたと思います。あの出来事は人として成長する一つのターニングポイントでしたし、自分が初心に帰り、変われたところかなと思います。多くの人のことを裏切ってしまい、それでもバドミントンを続けるチャンスをもう一回与えてもらいました。自分の中でやるしかないと思いましたし、その気持ちがあったから、日々の練習により真摯(しんし)に向き合えたと思います。結果で恩返ししたいという気持ちだけでやっていました」
――日本のホープとして期待されていた中で、賭博問題により、周囲の目は一転して厳しいものに変わりました。自分がまいた種とはいえ、怖さはありませんでしたか。
「もちろんありました。飲食…
- 【視点】
違法賭博というプライベートでの過ち。交通事故による、まさかの大けが。世界の絶対王者たる立ち位置を築きながら、4年に1度のオリンピックと自身のピークが重ならなかった巡り合わせ。周囲の期待と自己分析のギャップ。そんなすべての経験から導き出された、桃田選手が、子どもたちに伝えたいこと。スポーツの本質を突いているのだと感じました。 まず、楽しむこと。そして、いざ勝負となれば、真剣勝負にこだわること。この両輪のどちらが欠けても、本当の意味で、スポーツをエンジョイする境地に達することはできないのだと。 楽しむことは、自ら進んで取り組むことから生まれます。自ら進んで取り組めば、主体性が磨かれる。やらされてやるスポーツほど、つまらないものはない。 その「もう一個先の段階」(桃田選手)として、真剣勝負が語られています。勝負にこだわれば、勝ちたい思いは強くなる。思いが強くなれば、勝つために技術や戦術を創意工夫する。その前段階で主体性の尊さを体感しているから、誰かにやらされる勝利至上主義に陥ることもない。つまり、知性が磨かれる。 スポーツとは、体を動かし、体を鍛えるだけにとどまる営みではない。自ら知を磨く営みでもあるのだと、改めて気づかされます。借りてきた言葉ではない、桃田選手の言葉で、子どもたちに伝えていってほしいと願います。
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