日本の猫の「祖先」は平安時代にやってきた 遺伝子情報の解析で判明

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太田匡彦

 現代の日本で暮らす猫(イエネコ)たちに直接つながる祖先は平安時代の九州に本格的に渡来、鎌倉時代に入って大きく増えだし、日本列島を北上するように広まった――。そんな研究成果を、アニコム先進医療研究所の松本悠貴研究員らがまとめた。現在の猫の血液などから遺伝情報を抽出、解析する手法で導き出した。20日に「コンパニオンアニマルのゲノム医療研究会」で発表する。

 考古学的には、長崎県壱岐市のカラカミ遺跡から紀元前2世紀ごろ、弥生時代の猫の骨が出土している。また文献史料に猫が登場し始めるのは平安時代からだ。平安京の道路側溝跡からは猫の骨が見つかっている。だが本格的な渡来の時期や列島の各地にいつ広まったのかといった伝播(でんぱ)状況については、詳しい研究がなされておらず、よくわかっていなかった。

 松本さんらは全国各地の猫71匹から血液などを採取。遺伝情報を抽出して解析し、ある遺伝子が何世代前から受け継がれている遺伝子なのか、その世代の遺伝子にどの程度の多様性があるのか調べていった。それぞれの世代の多様性の程度から、その時点で生息していた集団の相対的な大きさなどが推定できる。「各地域の猫の遺伝情報を統計処理すれば、何年前どこにどの程度の数の猫がいたのか、集団としての歴史がわかる」(松本さん)という。

 考古資料から抽出したデータも合わせて約3年かけて解析をすすめたところ、いま日本列島に生きている猫たちの祖先は、約900年前の平安時代に、まず九州に本格的に渡来していたことがわかった。「考古学的には弥生時代に渡来していたことが裏付けられているが、その頃はまだ散発的、限定的な渡来だったのではないか。少なくとも現代の猫たちに直接的にはつながっていないとみられる」と松本さんは指摘する。

江戸時代に「急増」

 九州に本格渡来した猫は徐々…

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太田匡彦
文化部

ペット、動物、アニマルウェルフェア