ヒジャブの東京スタイル発信 ムスリムクリエーターが直面した無関心

有料記事ダイバーシティ・共生

藤えりか 太田原奈都乃

 イスラム教徒の女性のヒジャブを、日本のファッションや街角になじむスタイルで表現し、インスタグラムなどで発信してきた東京生まれ・東京育ちのムスリムクリエーターがいます。インドネシアをルーツとするアウファさん(29)。ヒジャブを始めるときには「これから面倒なことが起きるだろうな」と思ったそうです。それでも、イスラムの偏ったイメージを払拭(ふっしょく)したいと熱意をもって取り組んできました。パレスチナ問題も経て感じたのは、日本社会の無関心さと、深く思考する機会の少なさ。どういうことか、聞きました。

 ――日本の街やファッションになじむヒジャブのスタイルを提案・発信するようになったきっかけは、どんなものでしたか。

 ヒジャブは早稲田大学建築学科への入学を機に、自分の意思で始めました。

 最初のヒジャブは、インドネシアの親類がおみやげで持ってきたものでした。親の見よう見まねで、いかにも東南アジアというイメージ。自分の個性を表現しきれていないコーディネートで、見た目からして「ザ・外国人」。これから面倒なことがいろいろ起きるんだろうなと心の準備をしたうえで入学に臨みましたね。

 ――周囲の反応はどうでしたか。

大学サークルの勧誘ビラ、1枚ももらえず

 インドネシアの民族衣装っぽい真緑の格好で大学の入学式に行ったら、サークルの新入生勧誘のビラ配りで1枚ももらえませんでした。5歳上の姉から「もらえないよ」と言われていたので予想はしていましたが。新入生が通る「花道」を通ってもゼロ。社会ってこんなものか、と思いました。

 ――他にも嫌な思いをしたことはありますか。

 「なぜヒジャブをしてるのですか」「ヒジャブ、暑いですか」……。だいたい最初の10分はこういう説明をしなきゃいけなくて。分け隔てなく話せてどんどん仲良くなれる人もいますが、初対面はすごく面倒なことが多いですね。

 アルバイトに応募しても、書類も見てくれなかったりします。バイトの面接や就活で、「お客さんの目があるから、ヒジャブを外して」と言われたこともあります。

 このやりとりを毎回繰り広げるのが非効率に思ったので、だったら一人で何かしちゃおうと、日本のファッションや風景になじむヒジャブの表現を作品として自撮りで出すようになりました。スポーティーなジャージー系の服装が骨格にしっくりくるのですが、それにヒジャブと帽子を合わせたりします。ファッションという共通言語を通してイスラムの偏ったイメージを払拭し、関心を持ってもらえるようになればというパッションをもって始めました。

 ――ファッションで表現しようと思ったのはなぜですか。

 大学3年ぐらいから関心を持ったんです。姉と百貨店の化粧品売り場に行った時に、メイクの魅力を感じました。

 イスラム教に改宗した日系デザイナーのハナ・タジマさんがユニクロとコラボし、その等身大のスタイリングに感化され、イメージが広がりました。もともと日本のファッションが好きなので、ヒジャブの巻き方との組み合わせをパズル感覚で楽しむようになったら、どんどんはまっていった感じですね。メイクもスタイリングも空間作りも撮影・編集も、全部一人でやってきました。

 ――周りの変化はありましたか。

 希望をもって活動してきましたが……。

 「なにか面白いことをしてい…

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