ありがたかった「有償ボラ」という選択肢 30歳女性回復のステップ

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浜田陽太郎

 「スケッター」というウェブ上のマッチングサービスがあります。取り持つのは、男女の出会いではなく、介護現場と有償ボランティアのつながりです。慢性的に人手が不足する現場へ、有償ボランティアの「助っ人(スケッター)」を橋渡ししてきました。

 この仕組みを取材していたら、引きこもり経験のある女性に出会いました。そのお話は、予想を超えた深みと広がりのあるものでした。

 介護や高齢社会に関心があり、「スケッターに参加してみようかな」と考えている人にお伝えしたくて、記事を書きます。

連載「8がけ社会」

高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。今までの「当たり前」が通用しなくなる未来を私たちはどう生きるべきでしょうか。専門家の力も借りながら、解決に向けた糸口を考えます。

 鈴木彩夏さん(30)は昨年12月から、神奈川県川崎市の有料老人ホーム「グッドタイムホーム・鷺沼」でスケッターとして活動しています。

 写真やイラストを使って施設で開かれたイベントの画像を手際よくデザインし、文章をつけてブログやインスタグラムで発信。2時間で3千円を受け取ります。

うつ病で離職を経験

 「『Canva(キャンバ)』という無料で使えるデザイン用のアプリがあって、とても便利なんです」

 鈴木さんは、写真の撮影と画像デザインが趣味です。全国の水族館を回ってイルカやペンギン、アシカなど海獣たちの写真を撮り、インスタ(@sakura_dolphin79)で発信してきました。図書館などで展示会を開いた経験もあり、かなり本格的です。

 写真とデザインの特技を使えれば、自分にとっても生きがいになる。目の前の相手に感謝されて、やりがいも生まれるだろう。有償でお金を受け取るから責任や緊張感もあるし。そう思って、スケッターに応募したといいます。

 「実は4年前まで、児童福祉の職場で働いていたんです。でも、うつ病を患って離職しました」

 そう切り出した鈴木さんのお話は、意外な方向へ展開しました。

 福祉の専門学校を卒業した鈴…

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