「本を売るために本以外のことを」 横浜発の有隣堂が関西へ出た理由

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聞き手・田中ゑれ奈
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 横浜の地で創業して114年、首都圏に約40店舗を展開する書店チェーン「有隣堂」が昨年10月、神戸・三宮の神戸阪急に関西エリア1号店をオープンしました。雑貨の販売に力を入れた店づくりや、文具やグルメの話題も発信する人気YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」など、書店の枠組みを超えて試行錯誤を続けるローカル書店。「関西に攻め込んでやるぜ、とは全然思ってない」という松信健太郎社長ですが、その心は。

進出しなかったのは「社内の空気感」

 ――今回の関西出店は、有隣堂の経営戦略の中でどう位置づけられますか

 近年、台湾発の書店「誠品生活日本橋」や、複合型店舗「HIBIYA CENTRAL MARKET」の運営を東京都内で手がけてきました。アパレル関係者やクリエーターが集まる展示会にも積極的に参加していて、そうした活動に反応する形で、新たなお声掛けをいただく機会も増えています。本にとどまらない活動が実を結び、新規出店までこぎ着けた初めての事例が、神戸阪急店なのだと捉えています。

 ――関西進出にあたり、社内で慎重論はありませんでしたか

 特になかったと認識しています。有隣堂は神奈川を中心に東京、千葉へ出店してきましたが、(特定の地域に大量出店することで競争力を高める)ドミナント戦略を打ち立ててきたわけではありません。エリアを広げてこなかったのは、あくまでも社内の空気感の問題だったと考えています。

 というのも、三十数年のあいだ社長をしていた私の祖父・松信泰輔が、日本書店商業組合連合会の会長も長く務めたんですね。おそらく彼は、有隣堂を成長発展させると同時に日本全国の地元の書店を守るというミッションを己に課して、地方には出て行かない選択をしていたのだと思います。

 今はもう、そういう時代でも…

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