富士通の役割、責任は? 識者が見る英史上最大の冤罪「郵便局事件」
英議会の委員会で1月16日、富士通幹部が英史上最大規模の冤罪(えんざい)である「郵便局事件」をめぐって質問に応じます。
この事件では、富士通が郵便局向けに提供していた会計システム「ホライゾン」の記録を証拠として、700人以上が不正会計などの罪で訴追されました。エクセター大ロースクールのリチャード・モアヘッド教授に、この冤罪事件と富士通の責任について聞きました。
――英国民放でのドラマ化を機に事件に注目が集まり、日本でも報じられています。この事件は英国の法制度の歴史において、どう位置づけられますか?
最も広範囲に及んだ冤罪事件であるということができます。これほど多くの人びとが巻き込まれた冤罪事件は過去にありません。多くが刑務所に入れられ、人生を台無しにされました。
ITシステムのガバナンス、(郵便当局と個々の郵便局との)契約の問題、司法制度、事実上の国有事業である郵便当局の監督など、様々な問題が浮き彫りになりました。
「有罪判決破棄は1割程度」
――有罪判決は1999~2015年に出されました。そのほとんどが覆されていない、というのが私にとっては驚きです。
有罪判決が破棄されたのは1割程度です。郵便当局が弁護士を使って、秘密保持契約を結んでいたことも大きいでしょう。また、ジャーナリストが記事を書こうとしても、当局が「名誉毀損(きそん)だ」と脅すようなことがありました。公開すべき情報を公開せず、真実の全容に迫れないようになっていたのです。
――それがこれだけ大規模な冤罪にもつながったわけですね。ただ、2009年の時点で、専門誌がホライゾンの問題を指摘していました。
単純な言い方をすると、「否定の文化」が背景にあったと思います。実は09年以前にも、専門家による報告書が出ていました。報告書では証拠が限られているにもかかわらず、「システムに問題がある」と判断され、訴訟の末に当局は郵便局長と和解しました。
しかし、この事件で当局は後に「専門家の報告書ではすべての証拠がそろっていなかった」と言い訳を始めました。彼らは悪いニュースを否定し、良いニュースだけを話題にするようにしていたのです。
「重要な役割担った富士通」
――富士通の役割をどう評価していますか。
富士通側は一連の流れにおい…