JR芸備線の再構築協、設置決定に地元は 広島・岡山

黒田陸離 原口晋也 礒部修作
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 広島・岡山両県を走る芸備線の一部区間の存廃などを話し合う「再構築協議会」の設置を国が決めた。協議の対象区間は備後庄原(広島県庄原市)―備中神代(岡山県新見市)間の68・5キロだが、地元の意向を踏まえて、区間外を含めた全線について広域的な見地から議論する。初会合は3月までに開かれる見通しで、協議の行方が注目される。

 参加する自治体は、両県と対象区間にある庄原、新見両市に加え、区間外の沿線にある広島市と広島県三次市の2県4市。

 広島県と庄原市は昨年11月、国に協議会参加の意向を示した際に広域的な議論を要請。国が沿線にある広島市、三次市、同県安芸高田市の3市に意向を尋ねたところ、安芸高田市だけが「結末がバラ色になると思っている人は一人もいないはずだ」(石丸伸二市長)などとして、不参加意向を伝えていた。

 再構築協設置の決定を受けて、広島県の湯崎英彦知事は「広域的な取り組みについて議論ができる枠組みとしていただいたことに感謝する。芸備線の利用につながる交通手段の転換や新たな需要の創出ができるよう、積極的な議論に努めたい」とコメント。庄原市の木山耕三市長は「広域移動をはじめ、様々な観点からネットワーク全体で議論が行われる中で、日常利用や観光による地域活性化に資する幅広い取り組みを行いたい」とのコメントを出した。

 岡山県の伊原木隆太知事は記者団の取材に対し、「地域住民の生活を守ることを第一に、具体的な方策を探っていきたい」と切り出した。存廃を含む協議については「我々が望んでする協議ではない」としつつも、議論の先延ばしは得策ではないとした。

 再構築協に広島市などが加わることで、議論の主導権を広島県側に握られるのではないかという懸念について問われると、「そうした危惧があるのは事実だ」と述べた。その上で「岡山県や新見市の意見が反映される運営体制になり、市全体への影響が十分配慮される協議を国にお願いしたい」とした。

 新見市の戎斉(えびすひとし)市長も「市の意見が十分に反映される協議体制や、市全体へ与える影響に配慮するよう求めたい」との談話を出した。

 一方、再構築協の設置を要請したJR西日本は「地域のまちづくりに合わせた、利用しやすい最適な交通体系を実現したい」とコメントした。

 再構築協には、両県のバス協会や学識経験者なども参加する。(黒田陸離、原口晋也、礒部修作)

【芸備線再構築協議会の構成員】(国土交通省の資料から)

《国》国交省中国運輸局(議長)、中国地方整備局

地方公共団体》岡山県、広島県、岡山県新見市、広島県庄原市、同県三次市、広島市

鉄道事業者》JR西日本岡山支社、広島支社

《公共交通事業者》岡山県バス協会、広島県バス協会

公安委員会岡山県警本部、広島県警本部

《学識経験者》呉工業高等専門学校環境都市工学分野の神田佑亮教授

JR芸備線の議論をめぐる経緯

《2021年》

6月 JR西日本が沿線自治体に協議を要請

8月 「利用促進」の検討会議初会合

11月 市民の募金でラッピング列車「カープ号」運行

《22年》

4月 JR西、赤字30区間の収支を初公表。見直し呼びかけ

《23年》

2月 JR西から経営状況を聞くヒアリング初会合

4月 国の「改正地域公共交通活性化再生法」が成立。10月施行

10月 JR西、再構築協議会設置を国に要請

11月 広島県と同県庄原市、岡山県と同県新見市が、国に協議会参加の意向を示す

12月 沿線の広島市と広島県三次市も協議会参加の意向。同県安芸高田市は不参加の意向を示す

     ◇

 〈再構築協議会〉昨年10月施行の「改正地域公共交通活性化再生法」で新設された制度。鉄道事業者や自治体の要請を受けて、国土交通相が組織し、持続困難な路線の「再構築」を話し合う。存廃や利用促進、バス転換などの方針を3年以内を目安にまとめる。財政支援など国の関与を打ち出すことで、話し合いを後押しする狙いがある。JR西日本は赤字が続く備後庄原(広島県庄原市)―備中神代(岡山県新見市)間の68・5キロについて協議を要請。同区間の2019年度の輸送密度(1キロあたりの1日平均利用者数)は48人。

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