八冠より高勝率18歳 戦えなかった2敗の記憶 最年少棋士・藤本渚

将棋の現役最年少棋士・藤本渚(なぎさ)四段(18)は、今期の勝率ランクで八冠の藤井聡太名人(21)を抑えて首位に立つ俊英である。八冠自らが注目棋士として名前を挙げた若き実力者は11日、東京都渋谷区の将棋会館で指されている第82期名人戦・C級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)9回戦に臨んでいる。相手は青野照市九段(70)。現役最年長棋士との52歳差の対戦が実現した。

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 小さい頃から棋士になりたかった。

 他のことに夢を抱いたことは一度もない。

 藤本渚が歩んできた道も、放ってきた輝きも、3歳上の八冠とどこか重なっている。

 2005年7月、海の日に海を望む高松市で生まれた。美しい名前は母が付けてくれた。

 「海のように奇麗で広い心を持つようにって」

 ブレザーの制服姿で対局に臨む高校3年生。将棋と出会ったのは保育園の頃だった。正確には「オセロ将棋」を始めた。

 「保育園に盤駒がなくて。オセロ盤と白黒のオセロ石で始めたんです。石を将棋の駒に見立てて。『これは飛車』『それは角』って友達と言い合いながらやっていたみたいです」

 6歳になった海の日。両親からのバースデープレゼントにプラスチック製の盤駒を贈られてからは、まっすぐに盤上を見つめてきた。

 小2で地元の教室に通い始めると、翌年にはアマチュア棋界を揺るがす快挙を成し遂げた。わずか8歳でアマ竜王戦の香川大会で優勝してしまったのだ。史上最年少で県代表になると、あの二文字を周囲から語られるようになる。

 天才。

 天賦の才を与えられた子供なのだと。

 「自分には才能があるのかも…

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