第2回「君の名は。」主題歌、ドラマーは俺じゃない 山口智史さんの孤独
ロックバンド「RADWIMPS」は2015年9月、ドラマーの山口智史さん(38)がジストニアという神経の病気のため、無期限で休養すると発表した。
その少し前から、バンドは代理でドラムをたたくミュージシャンを探していた。山口さんが知り合いを介して出会った森瑞希さん(32)が、サポートドラマーに決まった。
RADWIMPSはこのころ、アニメ映画「君の名は。」の音楽制作を進めていた。
山口さんも、主題曲「前前前世」など複数の曲で、基本的なリズムフレーズをつくっていた。
シンプルな8ビートを封印し、自分たちだけのビートを探す。ずっと続けてきたそんな作業にこのときも取り組み、編み出したフレーズを前前前世に込めた。
その曲の収録に、山口さんは加われなかった。
バンド活動を離れた山口さんは、妻(38)や3人の子どもとともに、都内から神奈川県の海沿いのまちに転居した。
それまでの日常すべてに疲れきっていた。とにかく、周囲の環境を変えたかった。
「君の名は。」は16年夏に封切られ、社会現象となるほど多くの観客を集めた。山口さんも封切り早々、地元の映画館で作品を見た。
前前前世も国内外で大ヒットした。RADWIMPSは、それまでも若者を中心に人気のロックバンドだった。それが、この曲をきっかけに、だれもが知るほどの存在になった。
この曲の、イントロと最後のサビの部分に、山口さんがつくったフレーズが骨格として残っていた。
森さんが独自の工夫を加えつつも、自分の考えたフレーズを尊重して、ドラム演奏を完成させてくれた。まずはそのことをありがたく感じた。
だが間もなく、違う感情が芽生え、心を覆い尽くした。
「俺は間違っていた」 深まる後悔
これだけたくさんの人に支持…
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