第1回「俺の人生、終わった」 RADWIMPS山口智史さんを襲った病
始まりは2009年春。ステージで演奏中のことだった。
「ん? なんかおかしいな」
ロックバンド「RADWIMPS」のドラマー、山口智史さん(38)は、右足にわずかな違和感を覚えた。
バスドラムを鳴らすため、ペダルを踏み込んだ足の力が、すんなり抜けない気がした。まるで、何かに引っかかったように。
「ちょっと疲れてるのかな。まあでも、大丈夫っしょ」。深くは考えなかった。
バンドとして5枚目のアルバムを引っさげての全国ツアーが始まったころだった。
前年にリリースしたシングル曲が、初めてヒットチャート1位を獲得した。ライブを重ねながら、徐々に支持を広げてきた中での本格ブレーク。全国24カ所のライブツアーのチケットはすべて完売していた。
いずれ治まると思っていた右足の違和感は、消えなかった。そして何度目かのステージで、沸点を超えるように、異変は音となって現れた。
「ドドン」と2回続けてバスドラを鳴らすべきところで、1回しか鳴らせなかった。
続けて鳴らすため、ペダルを踏んだ右足の筋肉をいったん緩め、再び踏み込む。これまで数え切れないほど繰り返し、まったく意識せずにできている動きだった。それが、すねのあたりの緊張が解けず、ペダルを踏んだままになってしまった。
「ズタズタで、ボロボロ」 練習するほど調子が悪化
その後も症状は突然、何の脈…