第1回「俺の人生、終わった」 RADWIMPS山口智史さんを襲った病

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田村建二

 始まりは2009年春。ステージで演奏中のことだった。

 「ん? なんかおかしいな」

 ロックバンド「RADWIMPS」のドラマー、山口智史さん(38)は、右足にわずかな違和感を覚えた。

 バスドラムを鳴らすため、ペダルを踏み込んだ足の力が、すんなり抜けない気がした。まるで、何かに引っかかったように。

 「ちょっと疲れてるのかな。まあでも、大丈夫っしょ」。深くは考えなかった。

 バンドとして5枚目のアルバムを引っさげての全国ツアーが始まったころだった。

 前年にリリースしたシングル曲が、初めてヒットチャート1位を獲得した。ライブを重ねながら、徐々に支持を広げてきた中での本格ブレーク。全国24カ所のライブツアーのチケットはすべて完売していた。

 いずれ治まると思っていた右足の違和感は、消えなかった。そして何度目かのステージで、沸点を超えるように、異変は音となって現れた。

 「ドドン」と2回続けてバスドラを鳴らすべきところで、1回しか鳴らせなかった。

 続けて鳴らすため、ペダルを踏んだ右足の筋肉をいったん緩め、再び踏み込む。これまで数え切れないほど繰り返し、まったく意識せずにできている動きだった。それが、すねのあたりの緊張が解けず、ペダルを踏んだままになってしまった。

「ズタズタで、ボロボロ」 練習するほど調子が悪化

 その後も症状は突然、何の脈…

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田村建二
科学みらい部
専門・関心分野
医療、生命科学
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年1月17日16時39分 投稿
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    諦めからはじまる未来もある。 局所性ジストニアの症状を抱えているピアニストさんが「指が思うように動かず、今まで弾くことができた曲が弾けなくなる」絶望について、そこから左手だけの演奏家として活躍されるに至るまでのご経験についてお話されて

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    岡崎明子
    (朝日新聞デジタル企画報道部編集長)
    2024年1月16日11時0分 投稿
    【視点】

    2年前に放映されたNHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」では、オダギリジョーさん演じる錠一郎が、突然、トランペットが吹けなくなる症状に襲われました。ドラマでははっきりと病名は告げられず、「原因不明の病」とされましたが、山口智史さんと

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