地震で水不足、透析もお産もできない現場 「医療者もほぼ全員被災」

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永田豊隆 宮坂知樹 小西良昭 編集委員・辻外記子 後藤一也
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 能登半島地震は、石川県の医療現場も直撃した。水不足や機器の損壊で手術や人工透析ができなくなり、多くの患者が移動を余儀なくされている。医療を必要とする高齢者が多い被災地。医療関係者は、悩みながら対応に追われている。

 志賀町の富来病院は地震の揺れでスプリンクラーが作動。屋内は水浸しになり、天井がはがれ落ちた。医療機器の多くが故障して使えなくなり、笠原雅徳事務長は「診療に使える機器はCTとX線くらい」と明かす。

 入院患者39人全員と、併設する介護施設に入所し酸素吸入やたんの吸引などが必要な7人は、近県から支援に入った消防署員らの協力で転院した。現在、外来患者の受診は軽症者に限っている。

 4日時点で介護施設に約25人が残るが、厨房(ちゅうぼう)も使えずに非常食で急場をしのぐ。今後、高齢者向けの流動食が不足する恐れがあるという。

 能登町の宇出津総合病院では、手術室のドアも破損したため、全ての手術を中止している。震災でけがをし、手術が必要な被災者は受け入れ可能な病院を探して移動してもらっている。

 断水した上、給水タンクも破損。大量の水を必要とする透析患者約30人は、自衛隊のトラックで金沢市内の複数の病院に移動したという。

 4日時点で約50人の患者が入院。上野英明事務局長は「食材が底をつきかけているし、医薬品も減っている」と危機感を隠さない。

 七尾市の能登総合病院でも断水し、水の確保は給水車に頼る。約220人の入院患者の食事や飲み水に優先的に使用するため、土倉洋一・診療支援課長は「医療に使うには全く足りていない」と言う。

 同市の精神科病院、七尾松原病院も断水が続き、トイレの水が流せない。事務局担当者は「長期化すれば、患者の精神状態にも影響しかねない」と心配する。

 近県から支援に入る医療関係者も苦心している。富山市の富山赤十字病院は2日、医師や看護師らでつくる救護班と災害派遣医療チーム(DMAT)を派遣。重症患者を金沢市の病院へ搬送する作業などにあたった。

 4日夜に富山市であった第1陣の報告会によると、治療が間に合わず、院内で亡くなる人もいたという。道路、水道、電気が機能せず、「医療資機材もかなり逼迫(ひっぱく)し、かなり過酷だ」という報告もあった。

 渡辺和英医師(42)は「住民や警察・消防、自衛隊の協力で無事搬送できた。医療資源が今後入ると、さらに課題が見つかり、救護の要望が高まってくる」と述べた。

「家を失い、帰る所がない多くの高齢者がいる」

 石川県七尾市の恵寿(けいじ…

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この記事を書いた人
永田豊隆
ネットワーク報道本部|大阪駐在
専門・関心分野
貧困問題、社会保障、精神科医療、依存症
辻外記子
くらし科学医療部長代理
専門・関心分野
医療・ケア、医学、科学
  • commentatorHeader
    永田豊隆
    (朝日新聞記者=貧困、依存症、社会保障)
    2024年1月5日15時53分 投稿
    【視点】

    取材陣の一人として、大阪本社から現地に取材しました。 記事に盛り込んだ以外に、電話がまったくつながらない医療機関もあります。被災が激しいところほど道路状況が悪く、記者が足を運ぶことも困難です。そうした現場がどうなっているか心配です。 断

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