第10回律令国家で女性活躍、頼朝は夫婦別姓 ジェンダー視点で歴史を見ると

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聞き手・山口宏子

 ジェンダーの視点から歴史を見ると、様々な史料が新たな顔で、多くのことを語りかけてきます。そこから、いまと未来を考える手がかりを見つけることもできそうです。日本近世史・ジェンダー史が専門の研究者、横山百合子さん(国立歴史民俗博物館名誉教授)に聞きました。

 ――歴史研究の中に、どのようにジェンダーの視点が入ってきたのでしょうか。

 「長年、歴史は男性が男性について研究するものとされてきました。戦後、様々な時代の女性たちの姿を明らかにする女性史の取り組みが活発になりますが、1980年代初めまでアカデミズムでは評価されませんでした。でも社会に男女の区別を前提にすることへの疑義が広がり、ジェンダーが注目されている。それに呼応して、歴史学も少しずつ変わってきています」

 ――ジェンダーの視点が加わると何が変わりますか。

 「史料の見方が変わってきます。例えば、鳥取県から出土した8世紀初めの銅製の骨蔵器(火葬後の遺骨を納める容器)があります。重要文化財です。国立歴史民俗博物館(歴博)ではその複製を、古代の火葬の例として展示しています。もちろん、それも史料が語る大事な側面です。でも、骨蔵器のふたの文字を読むと違うことが見えてきます」

 ――何が書いてあるのですか。

 「この器に葬られた女官の事績が刻まれ、女官も男官と同じように、働きを評価されて昇進したことが記されているのです。骨蔵器は、葬送の歴史だけでなく、日本が律令国家に踏み出した頃に、朝廷で女性が活躍していたことも語っているのです」

現代の生きづらさ 昔の人々と重ねる

 ――そうした視点で構成した歴博の企画展「性差(ジェンダー)の日本史」(2020年)は大きな反響を呼びました。プロジェクトの代表を務められましたね。

 「これほど関心が高いとは、正直、驚きました。LGBTQまで研究し展示することはできませんでしたが、ジェンダー史学の成果をできるだけ紹介しようと考えました。若い女性が多く訪れ、『展覧会で泣いたのは初めて』といった感想メールも受け取りました」

 ――歴史資料が大半の「渋い」展示がなぜ、それほど心を動かしたとお考えですか。

 「若い世代は特に、女性も男…

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