第7回AIにできる?子供の「推論の跳躍」 今井むつみさん・瀬名秀明さん
生成AI(人工知能)の「ChatGPT(チャットGPT)」が耳目を集めている。人間とAIの言語や思考はどこが違うのか。AIとの比較から見える人間の本質とは何か。ベストセラー「言語の本質」の今井むつみさんと、SF作家の瀬名秀明さんが語り合った。
もっともらしい答えに潜む落とし穴
今井 2022年の12月ぐらいに、チャットGPTが出た当初は、私もすごく衝撃を受けて、学生といろいろ試してみたんです。チャットGPTの作る文章は、それまでのAIの文章と比べて流暢(りゅうちょう)だし、自然です。
ただ、内容をよく知らないと、危ないとも思いました。間違いだとはっきり分かる場合はともかく、こちらに専門的な知識がない内容を、もっともらしく流暢に書かれると正しいかどうか判断がつかない。また、まったく意味のないことを答えてくることもあります。
瀬名 ハルシネーション、つまり「幻覚」ですね。誰でも分かるような質問に対しても、まったく見当外れのことを時々言うことがある。
チャットGPTに「瀬名秀明とは誰ですか」と聞いてみたことがあるんです。答えは、作家だというのは合っているんですが、代表作にまったく聞いたことがないタイトルが書いてあって、むしろ真っ先に出てきそうな「パラサイト・イヴ」とかが書いていない。そういう不思議な間違え方をしますね。
今井 小学生の算数の理解について調べるために、テストを作っているんです。本当に基礎的な、例えば「2分の1と3分の1はどちらが大きいですか」のようなことを聞くんですけど、1年前にチャットGPT3・5にやらせてみたら、「3分の1のほうが大きい」と答えたんです。なぜかと聞くと、分数は分母と分子で成り立っていてとか、問いに関係ないことを延々と答えて、支離滅裂になる。
チャットGPTは、東大入試…
- 【視点】
2024年も、その向き合い方を問われ続けることになるだろうAI。年明け早々、いろいろと考えさせられる対談です。 今井むつみさんの、この言葉に考えさせられます。 「今すごく危険だと思っているのは、小学校や中学校で、『チャットGPTの使い方
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