クリスマスイブに逝った夫へ 二度とない家族の日常、今日も撮るよ

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中村真理
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 年末が近づくと、名古屋市の写真館「ウネルマ」は、年賀状用の写真を撮りに来た家族連れでにぎわう。

 母親の腕の中で泣き出した赤ちゃんを、女の子がのぞき込む。その様子を父親が見つめる。店長の末広佑美さん(38)が、テンポ良くシャッターを切る。「オッケーです!」

 写真館は家族の幸せな瞬間を撮る場所だ。

 もしつらくなるなら、この仕事を辞めよう。あの日、そう思ってスタジオに入った。

 楽しそうに笑いあう家族。見ていて、うれしくなった自分がいた。

 やっぱり私は好きなんだ。家族の日常を撮ることが。

夫に背中を押されて始めた写真の仕事

 20歳の時、10歳上の貴志さんと結婚。20代は子育てに追われた。

 「30歳までにやりたいことを見つけて、仕事にしたら」。貴志さんに背中を押され、趣味だったカメラを手にした。七五三で訪れた写真館の雰囲気が好きで、30歳のとき、今の写真館で働き始めた。

がんが転移、突然の余命宣告

 週末は必ず撮影が入る。貴志さんがご飯を作り、娘たちを遊びに連れていってくれた。家族で過ごす時間がなかなか取れず、周りには心配されたけれど、互いを応援しあう安心感があった。

 2021年4月。貴志さんは主治医に、「年は越せない」と告げられた。直前に見つかった直腸がんが、肝臓や肺に転移していた。

 突然の宣告に、数分前に見ていた景色まで変わったように感じた。

 「あと9カ月ぐらいか。どう…

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