ここは「アウグストゥスの別荘なのか」 調査22年目の大発見

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ソンマベズビアーナ=藤原学思
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 ここは本当に、「アウグストゥスの別荘」があった場所なのか。存在が確かなものとなれば、大きな発見となる別荘で、初代ローマ皇帝はどんな暮らしをしていたのか。その疑問に答えるため、イタリア南部ナポリ近郊で、東京大の調査団が20年以上にわたって発掘調査を続けている。そして今夏、大きな「手がかり」が見つかった。

初代ローマ皇帝の別荘?

 欧州大陸で数少ない活火山であるベズビオ山。標高1281メートルのその山の北側に、ソンマベズビアーナの街がある。

 住宅街の狭い砂利道を進むと、イタリア語の案内が貼られた門に出くわす。「学際的考古学ミッション 東京大」。その奥に、古代の建造物が現れた。

 ここが「アウグストゥスの別荘」と呼ばれる地。最寄り駅も同名だ。農家が土を掘り起こしたことを機に1930年代前半までにアーチの一部が見つかり、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(前63年~後14年)の所有した建造物だと、長らく考えられてきた。

 根拠は主に2点。一つは歴史家タキトゥスが、アウグストゥスの死亡場所について「(ベズビオ山北東の)ノーラの近く」と記していたこと。建造物の位置はノーラから南西に10キロほどで、記述と一致する。もう一つは、発見された門の造りが極めて立派だったことだ。

 文化庁長官も務めた東大名誉教授の青柳正規さん(79)には「アウグストゥスの別荘」を掘ることが目標の一つだった。

 74年からイタリア各地で発掘を続けていた。実績を重ね、当局の許可を得て、2002年から「別荘」を掘り始めた。

 掘り進めると、建物は上中下段の3段構造だった。03年には、大理石でできた優雅な彫像2体を発見。それらが05年の愛知万博で展示されるなど成果が出た。モザイクの床や海の神々を描いた天井画、ワインを醸造していたとみられる大きな瓶(かめ)なども多数見つかった。

埋まった痕跡、見つからず…

 ところが、調査開始直後、こ…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論