三毛別ヒグマ事件、アイヌ文化…北海道の出版社が電子化、売上上々

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佐藤亜季

 北海道内の出版社でつくる「北海道デジタル出版推進協会」(札幌市、代表理事・林下英二=中西出版社長)が、発足から10年を迎えた。出版不況で地方の出版社が苦境に立たされるなか、道外の人が手にすることが難しかった本を電子化して全国に売る事業を開始。地道な活動が実を結び、電子化以外の活動にも乗り出している。

 道内の出版社15社が集まって2013年6月に設立された。生き残りをかけて、電子化による全国への販路拡大をめざした。地域に根ざした地方発の出版物を絶やさないことで、北海道の文化や歴史を継承していくことが目的だ。

 会員出版社は現在、14社。現在販売している電子化した会員出版社の書籍・雑誌は約1050点。電子図書館システムを導入している全国の公立・学校図書館のほか、キンドルストアなどの電子書店で一般向けに販売する。

 当初は収益化できなかったが、売り上げはゆるやかに右肩上がりに伸び、コロナ禍では外出自粛を受けて電子図書館が全国で急速に普及したため、急激に売り上げが増えた。

 史上最悪の被害とされた苫前町の三毛別ヒグマ事件を記録した「慟哭(どうこく)の谷」(木村盛武著、共同文化社)や、札幌市円山動物園のボランティアガイドでもある絵本作家によるホッキョクグマの家族の愛情を物語にした絵本「にこにこぎゅっ」(ひだのかな代著、中西出版)、アイヌ刺繡(ししゅう)の基礎を学べる「伝統のアイヌ文様構成法によるアイヌ刺しゅう入門 チヂリ編」(津田命子著、クルーズ)などが、図書館向けにも一般向けにもよく売れているという。

リピート購入される人気絵本も

 電子化することにより、今ま…

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    天野千尋
    (映画監督・脚本家)
    2023年12月15日18時56分 投稿
    【視点】

    ネット社会やデジタル化の流れの中で、地域固有性はどんどん薄れ、文化は均質化していく方向なのかなと感じていました。でもこの記事のように、逆にデジタルによって地域の文化を外に広めたり、新たなやり方で収益を上げて文化の継承に役立てたりできるのだと

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