元市長ばかりの「名誉市民」 胸像ずらり、その理由をたどってみた
水戸市役所のエントランスには、ずらりと銅像が並んでいる。すべて、「名誉市民」の胸像だ。
11月上旬、この並びに新たに1体分の胸像が加わって6体になった。今年3月に名誉市民に選ばれた、元水戸市長で参院議員を務めた岡田広氏(76)のものだ。
11月6日に市内のホテルで開かれた胸像の除幕式。政治家や支援者ら約870人が集い、国会議員や県内自治体の首長の姿もあった。
胸像建立委員会代表の高橋靖市長は「常に市民の目線に立ち、フットワーク軽く市民の中に飛び込み、とにかく政治を身近なものに感じさせたまさに張本人だと思っている」と持ち上げ、「これまでの実績が高く評価されて名誉市民の称号を贈ることになりました」と話した。
岡田氏は県議2期、水戸市長3期、参院議員4期と、50年近く政治活動を続け、昨年7月に引退した。「これからも一市民、一県民として経験を生かしながら水戸市をはじめ茨城県の発展のために力を尽くしたい」と謝辞を述べた。
名誉市民の7人中6人が元市長
水戸市の名誉市民は全部で7人。
13代市長、14代市長、15代市長、16代市長、水戸芸術館初代館長、18代市長。市長在任期間が1993~2003年の岡田氏は17代目で、参院議員に転じたため引退を待って称号が贈られたという。
市長経験のある6人の胸像が市役所に並んでいるというわけだ。
市の名誉市民条例には、名誉市民についてこう書いてある。
「社会福祉の増進、産業文化の進展に貢献し、その功績が顕著である本市の住民、または本市の縁故者」
名誉市民は市長が選定した後に、議会が同意することで、称号が贈られる。
市秘書課は、市長経験者が多い理由について「市の発展に尽力した人を提案している。結果的に政治家が該当することが多い」と説明する。
「市民の理解は?」「置き続ける?」
ただ、複数の市議は「市長をやれば名誉市民になれるの? 名誉市民として市民の理解が得られているのだろうか」と疑問を呈す。
また、庁舎のエントランスに胸像が並ぶことについては「地震で倒れたら危ない」「市民が来る窓口である市役所の玄関先に、モアイ像のように並べるところは他にあるのだろうか」「今後、胸像が増え続けたらどこに置くのか」といった声が漏れる。
これまで胸像は有志が制作し、市に寄贈してきた。今回も高橋市長を代表に支援者などでつくる胸像建立委員会が立ち上がり、約660万円かけて制作。全て寄付金で賄ったという。過去の全ての胸像建立委員会の発起人に、当時の現職市長が名を連ねていた。
47県庁所在地 目立った自治体は
では、他の自治体では、どのような人が名誉市民になっているのだろう。市役所に銅像を置く県庁所在地はあるのか――。
そんな疑問を解消しようと、11月下旬に全都道府県の県庁所在地(東京都は都庁のある新宿区)を対象に、アンケートに協力いただいた。
市町村合併があった市については、各自治体の条例などの決まりに基づき、合併前の市町村の名誉市民も含めてカウントした。
全国ではどのような人が名誉市民に選ばれているのでしょうか? 記事後半ではアンケート結果を踏まえて、「8人目」になる可能性の高い現水戸市長に直撃取材しました。
名誉市民のうち、市長経験者…