京都の街なかはテーマパークか 高くて住めない街、行政の使命とは
「観光公害」と訳されてきたオーバーツーリズム。しかし、「公害」という表現は、観光に携わる人々の気持ちを傷つけ、観光客に自分たちが「公害」の原因であるかのような印象をもたらす――。京都市観光協会など観光に携わる23団体は、11月に出した「持続可能な京都観光を目指す共同声明」の中で懸念を表明した。では京都市は、市民を悩ませるオーバーツーリズムに対し、有効な対策を打ち出せているのだろうか。龍谷大政策学部の阿部大輔教授(都市計画)に聞いた。
市民生活と観光体験、それぞれの質に負の影響
――「オーバーツーリズム」とは、どういう状態のことを言うのですか。
特定の時間、特定の場所で観光客の収容能力が地域の限界を超え、市民の生活の質と観光客の体験の質の双方に負の影響を与えることです。例えば、京都市では錦市場がわかりやすいと思います。
対策を考えるうえで「オーバーしている」と言うには、その都市のキャパシティーの限界をきちんと議論することが必要です。「感覚」で議論しても効果的な対策は難しい。
国が「観光立国」をうたい、観光客誘致の数値目標を掲げる中で、収容能力を考えて「量を減らす」議論にはなりにくい。「分散化」「マナー啓発」などの対策は重要ですが、京都市は適切な数の議論にはなかなか踏み込めていません。
――京都市のオーバーツーリズムのどこが問題ですか。
市バスの混雑の問題がよく語られています。観光スポットで乗り降り自由なバスを複数走らせるなど、市民の生活動線と観光客の動線を分ける方法はもっと検討されてよい。私が考える最も深刻な問題は、観光の論理で京都の街の構造が変わっていく点にあります。
投機マネーが流入、取り壊される町家
――具体的には。
京都のオーバーツーリズムの…
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