第8回ファンの熱狂が支える宝塚、過重労働や体質を温存 「構造にメスを」

有料記事

聞き手・島崎周

 宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の劇団員の女性(25)が亡くなったことを受け、「神聖化」されてきた集団の問題点が明らかになりつつあります。熱狂的なファンが支える中で生まれた構造的な問題とは何か。宝塚の歴史に詳しく、「『未熟さ』の系譜 宝塚からジャニーズまで」の著書がある学習院大の周東美材(よしき)教授(社会学)に聞きました。

 ――劇団員の女性が亡くなった背景に、過重労働があったと指摘されています。

 大正時代の初めに劇団が創設された頃から、過重労働の問題は指摘されてきました。たとえば、宝塚の雑誌「歌劇」では1921年、ファンの懸念が掲載されています。

 「宝塚では毎公演期間は、其(それ)が一カ月たるを、或(あるい)は二カ月たるを問はず、ぶつ通しに引続(ひきつづ)き公演する。この間生徒を一日も休めさせぬは、少し無理ではないか(中略)いよいよ労働過重である」

 オペラやミュージカルの多くは、演目ごとにキャストが入れ替えられますが、宝塚は各組ごとに、次々に新たな演目を稽古・公演していきます。年間スケジュールが密になり、1日2回公演も珍しくありません。ファンの期待も高いので、過重労働が生まれやすい状況になっていたと思います。

 周東教授は、古いやり方を変えられなかった組織の問題や、ジェンダー不平等を背景とした問題を指摘。今回の問題を機に「構造的な問題にメスを入れなければ」と語ります。

代えのきかない魅力

 ――ファンの関心の高さに応えようとした側面があるわけですね。

 宝塚は、各組のトップスターを中心にファンの人気を集め、ファンは特定の生徒を応援していることも多い。

 そうした仕組みは宝塚ならではのものであり、ファンにとって、その魅力を他の公演団体で取り換えることはできません。代えのきかない魅力と常時公演は、過重労働と無縁ではなかったと考えます。

 ――劇団員は若い女性ばかりで未成年もいる。過重労働は問題にならなかったのでしょうか。

 戦前には、宝塚のライバルだ…

この記事は有料記事です。残り4383文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
島崎周
東京社会部|文部科学省担当
専門・関心分野
性暴力、性教育、被害と加害、宗教、学び、人権
宝塚歌劇団問題

宝塚歌劇団問題

宝塚歌劇団の劇団員(25)の女性が2023年に死亡し、歌劇団は2024年、上級生らによるパワハラを認めて謝罪しました。関連ニュースをまとめています。[もっと見る]