第8回優しかった父のアルバムに隠された処刑写真 娘は記憶を胸の奥底に
優しくて物静かな父が、悪鬼のような形相に変わることが、時々あった。
あのアルバムをこっそり見たときも、そうだった。
小学校高学年のころだったと、筒井やよひさん(75)は記憶している。好奇心旺盛な子だった。タンスの上にあった茶色い革張りの大きなアルバムをめざとく見つけ、引っ張り出した。
マラソン大会に出た父のさっそうとした姿。仲良しの叔父の若々しい写真もあった。子ども心にワクワクした。軍服姿のセピア色の集合写真。駐屯先の中国ののどかな風景……。
ページをめくる手が思わず止まった。
4枚続きの写真だった。
男性が数人、兵隊に引き立てられていた。大勢の見物人の前でうつぶせに地面に寝かせられ、頭を台の上に載せられる。兵士が大きな刃物で首を切り落とす。最後の写真は、生首がいくつも転がっていた。
異国の服を着た男性たちに、兵士が銃剣を突きつける写真もあった。父の日常風景を撮った写真の合間に、そうした戦争の写真が何枚も貼ってあった。異様なアルバムだった。
その後、何が起きたのか、はっきりとは覚えていない。
父が、玄関戸のつっかえ棒を握りしめていた。何度も、何度も殴られた。頭をかばった腕が、みるみる腫れ上がった。
運動会のハチマキ 「必勝」書いてと頼んだら
「やめなさい、死んでしまう…
- 【視点】
運動会の前日、書道の上手な父に白ハチマキに「必勝」と書いてと頼んだ時のこと。「お父ちゃんはね、もうそういうのは書かないんだ」と静かに言った。 私も一度、戦車か何かのプラモデルを作っていると、ほとんど子どもとしゃべることのない祖父から「そん
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