JR2路線3区間は赤字計24億円 利用客が少ない茨城ローカル線

宮廻潤子 樫本淳
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 JR東日本が公表した「利用客が特に少ないローカル線」の2022年度収支では、茨城県内を通る水郡線の一部区間と鹿島線のデータが開示された。この2路線3区間の赤字総額は、計24億円だった。

 21日に公表されたのは、新型コロナ禍前の19年度の平均通過人員(1日の平均乗客数/1キロあたり)が2千人未満で、災害などで長期運休中を除く34路線62区間。そのうち県内を通るのは、水郡線の常陸大宮―常陸大子、常陸大子―磐城塙(福島)と鹿島線全区間の鹿島サッカースタジアム―香取(千葉)だった。

 赤字総額の内訳は、水郡線2区間(営業距離計57・9キロ)で計17億6200万円、鹿島線(同17・4キロ)で6億3800万円だった。列車を走らせる費用に対して収入がどれだけあったかを示す「収支率」は、県内の3区間では最も高かった鹿島線でも11・4%。つまり、かかった経費の10分の1ほどしか収入がなかったことになる。

 水郡線の常陸大宮―常陸大子が5・3%、常陸大子―磐城塙は1・7%と3区間で最も低かった。常陸大子―磐城塙の収支率は、対象となった34路線62区間の中でもワースト6位だった。

 乗客数の減少も顕著だ。22年度の1日の平均通過人員を35年前の1987年度と比べると、鹿島線は2549人から1085人へとおよそ4割にまで減った。水郡線の常陸大宮―常陸大子は2458人から720人で3割弱に、常陸大子―磐城塙は788人から143人と2割弱にまで減少した。

平均通過人員(1日の平均乗客数/1キロあたり)の変遷

路線と区間               1987年度 2022年度 増減率

鹿島線(鹿島サッカースタジアム―香取) 2549人  1085人  57%減

水郡線(常陸大宮―常陸大子)      2458人  720人   71%減

水郡線(常陸大子―磐城塙)       788人   143人   82%減

     ◇

 今回の発表で、利用者が少ない区間のデータが開示されたJR水郡線。今年5月に水戸総局に赴任してきた私は、まだ利用したことがなかった。水郡線は水戸市福島県郡山市を結ぶ営業距離147キロの路線だ。「乗ってみよう」。茨城側の始発駅である水戸駅に向かった。

 平日の午後3時過ぎ。郡山駅に向かうワンマン列車を待つ人で、ホームは混み合っていた。8割ほどは制服姿の高校生だ。到着した2両編成のディーゼル列車に乗り込むと、ほぼすべての座席が埋まっている。立つ人も数人いた。

 やがて列車は動きだし、各駅に止まりながら進んでいく。駅に着くたびに乗客は少しずつ減り、常陸大宮駅で高校生の集団が降りると、車両に残った乗客は10人ほどになった。ここからが利用者が少ないとされる区間だ。途中駅で客の乗り降りが多少あり、常陸大子駅で私が降りる直前に車内にいたのは、5人だった。

 「(赤字路線問題で)水郡線の名前が出るたびに『ドキッ』とする」。常陸大子駅前で洋品店を営む斎藤晋二さん(76)はそう話す。高校で県外に進学したが、40年ほど前に地元に戻ってきた。「あのころは人口が多くて、駅を利用する会社員や学生さんはもっと多かった」と振り返る。

 自身は今も水戸や東京へ出かける時に水郡線を使う。地元商店会の会合でも話題に上がるという。「水郡線がなくなれば、町の交通網がおかしくなってしまう」。そう危機感を募らせる。

 午後6時前の列車に乗るため、私は再び駅に向かった。直前に着いた列車から10人以上の高校生が降りてきた。もし鉄道がなくなれば、間違いなく困る人はいる。とはいえ、赤字を垂れ流しては企業は成り立たない。答えは見えなかった。

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この記事を書いた人
宮廻潤子
水戸総局|茨城県政、水戸市政
専門・関心分野
地方政治、ジェンダー、多文化共生
樫本淳
水戸総局長
専門・関心分野
事件、防衛問題