カタログからレシピ本まで、お宝で稼ぐ英国王室 君塚直隆教授に聞く

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聞き手・平賀拓史

 皇居東御苑にある、皇室ゆかりの美術品や工芸品を収蔵する「皇居三の丸尚蔵館」(東京都千代田区)が今月、新装開館した。もともと宮内庁の管理下にあった同館の収蔵品は文化財保護法の対象外だったが、新装を機に文化庁所管の独立行政法人に管理が移され、新たに国宝や重要文化財に指定されうるものも多数眠っているという。貴重な収蔵品を今後どう活用していくべきか。海外の王室の動向に詳しい君塚直隆・関東学院大学教授(英国史)に聞いた。

     ◇

 ――君塚さんの専門とされる英国をはじめ、ヨーロッパの王室が持つ美術品や工芸品、宮殿などは日本でもなじみ深いですね

 ヨーロッパでは、王室の保有する財産を早くから公開、活用しています。見せ方や使い方に関するノウハウの蓄積量は圧倒的です。

 英国では、1992年にウィンザー城で大規模な火災があり、その膨大な修復費用を税金でまかなうことができず、問題になりました。当時の女王エリザベス2世は、それまで公開していなかったバッキンガム宮殿を夏の避暑期間中に一般公開し、収益を集めることにしました。自分たちで稼ぐしかない、という決断に踏み切ったわけです。それが現在でも大きな人気を集めているのはご存じの通りです。

 翌年には王室の持つコレクション(ロイヤルコレクション)を管理する財団が設立され、カタログやグッズの販売も始めました。王室のレシピ本とか、クリスマスを特集したカタログとか、多彩な品ぞろえです。商魂たくましいですよね。

 財団は現在では300人ほど…

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この記事を書いた人
平賀拓史
文化部|論壇担当
専門・関心分野
歴史学、クラシック、ドイツ文化など
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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2023年11月26日16時32分 投稿
    【視点】

    日本では何にお金をかけ、どのくらい人をかけるのか、ということのアップデートが遅れている。これまで製造業中心の経済を進めてきたことで、形ある「ものづくり」には人もお金もかけてきたが、すでに日本は製造業から文化や観光、情報を扱うサービス業へとシ

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