舞台で伝えたい「近所づきあい」 学生に脚本を書かせた二度の後悔

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大滝哲彰
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 ご近所付き合い、していますか――。

 かつては当たり前にあった地域の交流をテーマにした劇の脚本を、一人の大学生が手がけた。自身が経験した2度の後悔が、執筆に駆り立てた。

 追手門学院大(大阪府茨木市)経済学部3年の菅野咲月(さつき)さん(21)が生まれ育ったのは、兵庫県宝塚市の山あいにある小さな集落だ。

「植木のおじいちゃん」との日課

 高校生の時は吹奏楽部の朝練に行くため、自宅を出るのはまだ辺りが薄暗い朝5時だった。

 「おはよう。いってらっしゃい」

 近所に住むおじいちゃんは、庭の手入れをしながら、いつもあいさつをしてくれた。

 名前も知らない。「植木のおじいちゃん」と呼んでいた。毎朝、あいさつを交わすのが日課だった。

 高2の冬のある日。いつものように家の前を通ると、庭におじいちゃんがいない。次の日も。その次の日も。

 しばらくすると、近所でうわさが広まった。独居老人だったおじいちゃんが自宅で亡くなった、と。

 「私がもっと関わっていれば……」と悔やんだ。

菅野さんが脚本を書いた劇が上演されます

12月1~3日、大阪府茨木市西安威2丁目の追手門学院大安威キャンパスで。無料。予約は専用フォーム(https://stage.corich.jp/stage_main/262029別ウインドウで開きます)から。

知らなかったおばあちゃんの苦境

 もう一つ、後悔を経験した。

 小学生の頃は両親が共働きで、近所の人たちに支えてもらった。隣に住むおばあちゃんは時々、おいしい夕食を作ってくれた。織物が得意で、服のデザインもできる芸達者な女性だった。

 失恋した時には、おばあちゃ…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年11月26日17時57分 投稿
    【視点】

    安心して頼みごとをし合える関係や心配し合える関係を見つけるのに難しさを感じている人は多い。 そんな時代を生きている私たちは、ご近所づきあいをする上で特に親しくする家を指す「向こう三軒両隣(自分の家の向かい側三軒の家と、左右二軒の隣家)

    …続きを読む