鳥類学者に聞く西之島のこれから 「エキサイティングなところに」
噴火によって新たな島ができ、生態系がリセットされた小笠原諸島の西之島。島の生態系の形成には、海鳥の存在が重要な役割を果たすとされる。今後、どんな生物がすむ島になるのだろうか。国の調査に関わる森林総合研究所の川上和人・鳥獣生態研究室長(鳥類学)に話を聞いた。
――西之島の噴火から10年になりました。川上さんは、島の海鳥の様子を2013年の噴火前から調査してきています。
「噴火前の西之島には、8種の海鳥が繁殖していました。噴火直後にはほとんどいなくなったのですが、16年の調査以降戻ってきているのが確認できています。昨年にはカツオドリとアジサシの仲間の5種の海鳥の繁殖を確認しました。海鳥以外にも、鳥の死体を食べるカツオブシムシやハサミムシなど、噴火前から生息していた昆虫が生き残っていることも分かっています」
――西之島は生態系がどう形成されていくかという過程を観察できる唯一の島とも言われています。
「世界的に海底火山の噴火で新たに生まれた島は西之島だけではありません。アイスランドのスルツェイ島やインドネシアのクラカタウ島があります。ですがどちらも20キロ以内に別の島があり、生態系の形成に隣島の影響を受けやすいのです。
一方で、西之島は周囲130キロに島がありません。これだけ孤立した島の生態系がどうできあがっていくのか、その過程を観察できるのは人類史上初めてのことです。すごいことです」
――生態系の形成には海鳥の果たす役割がとても大きいと聞きます。
「島の生態系が構築されてい…