福沢諭吉ら遣欧使節団が贈った甲冑、マルタから帰郷 京都で修復へ

才本淳子

 地中海に浮かぶ島国、マルタにある建物の地下室に眠っていた日本の甲冑(かっちゅう)が、約160年ぶりに帰郷した。2025年の大阪・関西万博の同国パビリオンで展示予定だが、傷みが激しいため、修復プロジェクトが京都で始動した。

 甲冑は3領あり、幕末に江戸幕府がヨーロッパに派遣した文久遣欧使節団が当時英国領だったマルタに友好の証しとして贈ったものだ。福沢諭吉も使節団の随行員としてマルタを訪れ、軍事の要衝だった現地を興味深く観察したという。

 甲冑は箱に入れられ、武器庫の地下室でマルタ政府により保管されてきた。時を経て改めて友好の証しとして、大阪・関西万博での展示をマルタが決めた。ただ、海風が吹く同国特有の気候の影響もあり、かなり激しく傷んでいたため修復を日本側に依頼することになった。

 古美術品などを扱う「宮帯」(京都市)が運営する京都美術品修復所が担当する。日本の甲冑武具の修復を専門とする同修復所によると、甲冑3領のうち一つは、江戸時代中期のもので、大名の家老が身につけていてもおかしくない、鉄製の高級甲冑だという。

 宮下玄覇(はるまさ)代表は「歴史の重みと重責を感じている。貴重なものをお預かりした。我々の技術と知識を結集し、良い仕事をさせていただきたい」と話し、できるだけ当時の形に近づける修復をめざすという。

 マルタのアンドレ・スピテリ駐日大使は「甲冑がよみがえることを楽しみにしている。修復プロジェクトを通して、マルタ共和国と日本の歴史的につながりを再認識し、文化交流が深まること願っています」と話した。

 修復された甲冑は、マルタ騎士団の鎧(よろい)とともに、パビリオンで展示する予定だという。(才本淳子)…

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