第10回性教育「我が子だけ」では守れない 産婦人科医が説く、学校の役割

有料記事

聞き手・塩入彩

性教育を問う(10)

 文部科学省性暴力防止を目指して始めた教育プログラム「生命(いのち)の安全教育」が今年度から全面実施となった。小中学校などで性教育の講演を続ける、産婦人科医で埼玉医科大の高橋幸子助教は「学校の先生が性について堂々と教えてあげられる環境を」と訴える。

生命の安全教育に期待、そして一転…

 ――今年度から全面実施となった「生命の安全教育」をどう見ていますか。

 最初に、この「生命の安全教育」について知ったとき、「ようやく国も『包括的性教育』を本格的に始めようとしているんだ!」と期待しました。

 「包括的性教育」は、人権を基礎に幅広く性を学ぶ教育のことで、ユネスコなどが2018年に発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス(改訂版)」でも提唱されています。ガイダンスでは、学ぶべき八つの重要な概念の一つに「暴力と安全確保」をあげ、「生命の安全教育」もそこから始めるんだと思ったんです。

 ところが、文部科学省は「生命の安全教育は性教育ではない」と説明し、衝撃を受けました。本当にショックでした。

性行為とは何か わからなければ被害に気づけない

 ――今年の国会答弁でも、文科省は「生命の安全教育は、子どもたちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にしないことが目的で、性に関する指導とは目的が異なる」と説明しています。

 性暴力の被害や加害について学ぶのに、性行為など「性」について教えないというのは無理があります。

 性行為がどういうことかがわ…

この記事は有料記事です。残り2095文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
塩入彩
首都圏ニュースセンター|教育、武蔵野地区担当
専門・関心分野
ジェンダー、教育、性暴力、性教育
  • commentatorHeader
    千正康裕
    (株式会社千正組代表・元厚労省官僚)
    2023年12月7日16時0分 投稿
    【視点】

    一番大事なのは、子どもたちのために何が必要かということだ。一部に、子どもに性交を教えることに強く反対する人たちがまだいる。このため文科省も踏み込めないだろうと思うが、むしろちゃんと性教育をしないことの弊害は大きい。 性について正しい知識を

    …続きを読む