パレスチナ連帯デモ、ロンドンに30万人 「無力だけど、数の力で」

イスラエル・パレスチナ問題

ロンドン=藤原学思

 イスラエル軍からの攻撃により、パレスチナで多くの犠牲者が出る中、ロンドンで11日、多くの英市民がパレスチナへの連帯を呼びかけるデモ行進をした。1850人態勢で警戒にあたったロンドン警視庁によると、推計30万人が参加したという。

 ロンドンでは10月14日から毎週土曜にデモが実施され、これで5週連続。「パレスチナのための全国マーチ」と銘打たれたこの日のデモは過去4週と比べて最大となり、ここ数年でみても、2019年3月にあった欧州連合(EU)離脱反対デモと同程度に大きなものになった。

 11月11日は1918年に第1次世界大戦が終結した日で、午前中に関連の追悼行事があった。スナク首相ら政権幹部はそれを理由として、デモの中止を検討するよう度々要請。警視庁トップを呼び出す事態にまで発展していた。

 また、ブラバマン内相が英紙への寄稿でデモを「ヘイト(憎悪)マーチ」と呼んだり、「警察は偏っている」と根拠のない主張をしたりした。スナク氏も最大野党・労働党のスターマー党首も「停戦」を呼びかけることには否定的で、政治家への不信感が募っていることもあり、多くの市民を動員することになった。

 参加者は「ガザへの爆撃をやめろ、子どもへの爆撃をやめろ」と叫んだり、スナク氏がイスラエル軍に加担していると指摘したりしながら、市内中心部を約5キロにわたって練り歩いた。

 最終盤の米大使館付近では、バイデン大統領の名を呼び、「血で手が汚れている」(パレスチナ市民の死の責任がある)と訴えた。

「私たちには特権がある」

 参加したショーン・オブライエンさん(56)は「西側諸国が傍観し、その間に市民が殺されている事実に腹が立つ」と語る。イスラム組織ハマスの越境攻撃については「対応が必要だ」としつつ、「イスラエルは完全に、弱い者いじめのように振る舞っている」と非難。「事実上、バイデン氏しか止めることはできないのが残念だ」と嘆いた。

 夫妻で参加したジョイスさん(29)とナエフさん(27)=姓は非公表=は、「西側諸国の政治家もメディアも、デモの参加者をけなし、アラブ人をけなし、パレスチナ人がテロリストであるかのような振る舞い方だ」と主張した上で、こうも語った。

 「子どもたちがたくさん亡くなって、自分たちが本当に無力だと感じる。でも、私たちには『ガザのことを気にかけている』と、声を上げることができる特権がある。数の力を見せつけることができる。だから、できることをしたい」

 行進中、デモのルートに「カウンターデモ」とみられる数十人の男性が集う時間があったが、目立った衝突は確認されていない。英BBCによると、この日の逮捕者は100人以上に上ったが、そのほとんどが「カウンターデモ」側の極右団体のメンバーらだったという。(ロンドン=藤原学思)…

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