海自カレー、うまさの秘密は特製だし 護衛艦いずも支える隊員の誇り

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編集委員・土居貴輝
【動画】海上自衛隊の「鉄板メニュー」と言われるカレー。その調理場は?=土居貴輝撮影

 海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」は今夏、約3カ月半にわたる長い航海に出た。なにかと制約のある艦内生活で、乗員の楽しみの一つは毎日の食事。鉄板メニューと言えば、もちろん「海自カレー」だ。味の秘密を「トップ」が明かした。

 艦内で食事づくりを担当している隊員は「給養員」と呼ばれる。護衛艦「いずも」の給養員は19人。トップの給養員長が菅原治郎・海曹長だ。

 子どものころから料理好きで、将来は料理人になることを目指していた。高校生のとき、海上自衛隊の艦艇で提供される食事のレベルが高いことを知った。

 「護衛艦のなかで食事を作れるのか」

 料理人を目指す夢は変わらなかったが、自衛隊の艦に乗って料理を作ることにも興味がわいた。「人生の回り道のつもり」(菅原海曹長)で海自に入り、給養員になった。3年で自衛隊を辞めて、本格的に料理人を目指すつもりだった。

 気がつけば入隊から30年以上、ほぼ艦艇勤務で、隊員の健康と部隊を食事づくりで支えてきた。入隊後、栄養士の資格も取った。

 「給養員の仕事がツボにはまった。たまたま、海外に派遣される練習艦に乗る配置も経験し、やめるタイミングを逃してしまい、今に至っている。ただ料理を作る料理人ではなくて、料理をすることで『国防』という尊い仕事にもつながっている。やりがい、誇りをもって料理を作れる」

 いずもは大きな艦だけに、1回で400食分以上を作る。仕込みも実際の配膳の数日前から始まる。

 「海自と言えばカレー」と言われるほどの鉄板メニューだ。海自では、艦艇や部隊ごとにカレーの調理レシピが代々引き継がれている。カレーが提供される金曜日を楽しみにしている隊員も多い。

 ――いずものカレーのこだわりは?

 「なるべく、だしをとるようにしています」という答えが返ってきた。

 こだわりがあるとはいえ、カレーの専門店ではない。大人数の乗員に提供する「集団給食」である以上、いちからルーを作る時間はない。市販のルーをベースに使うが、「長年の経験と工夫でどのようなプラスアルファを加えていけるか、が給養員の腕の見せどころ」と笑う。

 ――カレーにも「だしが大切」とはどういうことなのか?

 「カレーって結局、うまみ要素がポイント。塩味、甘み、酸味。味の全体のバランスのチャートをイメージしてください。バランスがいいとおいしい。『隠し調味料』という言葉を聞くこともあるが、隠し調味料ばかり入れてもバランスは崩れる。素材そのもののうまみの土台を大きくしてあげないといけない」という。

いずも特製の「だし」とは

 では、菅原海曹長による、い…

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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2023年12月4日11時0分 投稿
    【視点】

    かつて「そうりゅう型」の「ずいりゅう」という潜水艦が、実際に海に潜航して行う訓練に同行取材したことがある。細いはしごを降りて入ると、艦内は想像以上に狭くて窮屈な空間だ。この中で約70名の隊員が生活をしているとのことで、思わず息が詰まりそうに

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    辻田真佐憲
    (評論家・近現代史研究者)
    2023年12月4日12時26分 投稿
    【視点】

    陸自が旧陸軍の影響を極力排除して設立されたのにたいして、海自は早くから旧海軍関係者が米海軍に働きかけるなどして設立に漕ぎ着けたという経緯があります。自衛艦旗が軍艦旗(いわゆる旭日旗)を継承しているのはその象徴です。海軍カレーの伝統が引き継が

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