親にしばられる宗教2世の苦悩、根っこに「家族教」 信田さよ子さん

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聞き手・喜園尚史

 親が、極端な教義を持つ宗教や陰謀論にはまったとき、一緒に暮らす子どもの苦悩は深い。逃げ出したいという思いと、親をすててはいけないという「家族教」のはざまでどうすればいいのか。社会に求められているものは。家族の問題に詳しい公認心理師の信田さよ子さんに聞いた。

 いわゆる宗教2世は、親が信仰している宗教の被害者であると同時に、「家族教」の被害者でもあります。親の陰謀論やDVなどに苦しむのも仕組みは同じです。親の思いや愛情を疑ってはいけない、子どもは親を大切にすべきだといった日本社会に根づいた「親子愛」というイデオロギーの犠牲者ともいえます。

 宗教であれ、極端な陰謀論であれ、自分の信じることは正しいし、子どもを幸せにすることだと親は考えています。外からは暴力的と思われる言動も、家族の中では親が「正しい」のです。一方で子どもは、教義や持論を押しつけてくる親から離れたいという思いと、親に背くことへの罪悪感の板挟みに苦しみます。

 親の問題は親しい友人でも言…

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2023年11月4日11時50分 投稿
    【視点】

    信田さんが指摘する「家族教」の問題は、本当にその通りだと思う。 付け加えておくと、高等教育の公的支出が少なく学費も高く、家賃補助もない日本では、子どもが経済的に親に依存する度合いが高いという事情が、子どもが親から物理的・精神的に独立しにく

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    塚田穂高
    (文教大学国際学部教授・宗教社会学者)
    2023年11月30日23時5分 投稿
    【視点】

    信田さよ子先生は、「宗教2世」問題が昨今のように社会問題化する以前から、この種の問題を抱える相談に広く応じてこられました。それがよく伝わるインタビューです。 「家族教」の語にはやや引っかかるものもありますが、「宗教2世」問題を、「宗教の問

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