執筆の動機は賞金だった 兼業作家・佐原ひかりさんが見た司書の現実

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聞き手・田中ゑれ奈

 図書館司書は公共性も専門性も高い職業ながら、その多くが非正規雇用で、待遇改善を求める声が現場からあがっている。一方、図書館が新刊を貸し出したり同じ本を複数備えたりすることが、出版業界の利益を損なっているという見方もある。両方の現場に身を置く人は現状をどう見ているか。執筆活動と並行して非正規の図書館司書としても働く作家の佐原ひかりさんに聞いた。

さはら・ひかり 1992年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部卒。氷室冴子青春文学賞大賞受賞作を加筆・改題した「ブラザーズ・ブラジャー」で2021年にデビュー。他の著書に「ペーパー・リリイ」「人間みたいに生きている」がある。

 《本にまつわる仕事をするのが夢だったという。新卒で入った会社を健康上の理由で辞めるのを機に、図書館司書になろうと大学の通信課程へ。私立大学の図書館でアルバイトをしながら資格を取り、2年目からは非正規雇用の臨時職員として司書を務めた》

 元々、作家志望だったわけではありません。小説を書き始めたのは、図書館で働いていてもお金がなかったからです。

 2017年にコバルト短編小説新人賞を受けた作品は、3、4日で書き上げました。それで賞金20万円は大きかった。最初の会社を辞める時に100万円あった貯金が、受賞が決まった頃には5万円になっていたので。

 《司書の仕事は1日7時間の週5日勤務で、月の手取りは約14万円。実家にお金を入れつつスマホ代や保険料を支払えば、生活はギリギリだった》

 臨時職員の仲間は全員女性で…

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この記事を書いた人
田中ゑれ奈
文化部
専門・関心分野
美術、ファッション、ジェンダー