大規模林業家の戦前から近代化の過程を研究

角津栄一
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 群馬県内で大規模に山林経営をしていた林業家の約1世紀にわたる経営の変遷に関する研究書「地方資本と森林・林業の近代化過程」を、富岡市の岡部保信さん(70)が刊行した。明治期に経営を拡大し戦後に縮小していくまでの、群馬県の林業経済史の一断面が描かれている。

 岡部さんは富岡市で林業会社を経営するかたわら、筑波大学大学院で林業経済史研究に取り組み、2015年に農学博士号を取得した。

 研究対象としたのは、群馬西部で明治から平成にかけて大規模に林業を営んでいたある林業家「A家」。明治期に山林の集積を始めた時期から、戦後のオイルショック、バブル経済などを経て所有山林の大半を手放すまで約1世紀にわたる変遷を、この家に所蔵してあった資料をもとに実証研究した。

 幕末から貸金業などを営んでいたところ、明治期から山林経営を手がけるようになった。大正期には朝鮮半島で造林事業に取り組んだ。昭和10年代には国内の所有森林面積が約2800ヘクタールに達した。第2次大戦後は、国内林業の不振などを背景に大量に山林を処分し、所有面積は約130ヘクタールに縮小した。

 岡部さんは、山林経営と資金収支との関連性にも着目し、投資対象が山林から金融資産へとシフトした過程を詳細に分析した。「明治期から平成期まで長期間にわたり、A家の山林集積からその処分までの過程を原資料にあたりながら、通時的にまとめることができた」と話している。

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