県境越え存続訴え 予土線の高知県、愛媛県の利用促進協が合併

福家司
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 10月から赤字ローカル線の再編を進める新制度が動き出した。事業者の求めに応じて、国土交通相が関係者を集めた「再構築協議会」を設置する仕組みだ。JR四国は当面この枠組みは使わないとしているが、赤字路線の存廃について自治体との議論を望む具体的な線区を挙げている。地域の足をどう確保すべきか、自治体や沿線住民の模索が始まっている。

 「長い歴史を持つ予土線が今、一番の存続の危機を迎えている」

 27日、愛媛、高知両県の「予土線利用促進対策協議会」を一本化する初会合が愛媛県松野町の町役場で開かれ、会長に就任した坂本浩・松野町長があいさつで不安を口にした。

 予土線は北宇和島―若井間76・3キロの路線で、2019年度の乗車密度(1日1キロ当たりの乗車人員)は301人。JR四国の路線でも特に利用者が少なく、同社が自治体との存廃協議の候補と認めている3線の一つだ。

 両県で別々に活動していた協議会が合併した背景には、このままでは廃線になりかねないという沿線自治体の危機感がある。10月に始まった国の新制度は、輸送密度1千人未満の区間では事業者や自治体の要請を受けて再構築協議会を設置でき、存廃などを話し合い、3年以内を目安に方針をまとめられるとされた。

 坂本町長は新制度に対し、「個人的には違和感を覚える。事業者と地元が赤字の責任を押しつけ合い、国は上から眺めていて、一定期間が過ぎたらバス転換や上下分離方式に誘導しようとしている」と批判した。

 この日の初会合には高知、愛媛両県の2市3町と議会、商工団体の代表、オブザーバーのJR四国、バス会社代表らが出席。来年3月に迎える全通50周年のキャンペーン事業をはじめ、今年度の事業計画を承認した。

 坂本町長は報道陣の取材に応じ、協議会の合併について「われわれの要望をJRや国にぶつけていく手段ができた。県境を越えて沿線が一つにまとまり、存続を訴えていくのは、国にとっても大きなインパクトになると思う」と意義を語った。

 一方、この日、地元でありながら、予土線を利用して参加した愛媛側の関係者はいなかった。坂本町長は「予土線の利用形態は交通弱者が中心で、きょうの出席者は足をしっかり確保されていた。ただ、われわれは手本にならなければならず、今後は利用していきたい」と述べた。(福家司)

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