「田代ダム案」JRと東電が大筋合意 水資源、確保へ前進 リニア

田中美保 床並浩一 林国広

 リニア中央新幹線の静岡工区での工事で、大井川から県外に流出する水を補う「田代ダム取水抑制案」について、JR東海と東京電力リニューアブルパワー(RP)との協議が大筋でまとまった。JR東海が25日、発表した。県が懸念する問題の一つ、水資源の確保については解決に向けた一歩になりそうだ。

 JR東海の提案は、掘削工事で静岡県から山梨県側に流出する湧水(ゆうすい)と同じ分を、大井川上流にある東電RPの田代ダムから取水する量を減らしてもらうことで、県外に流出する水量を補うというもの。水資源が失われるとして県が「全量戻し」を求めたのに対し、JR東海が「実現可能な案」として2022年4月に県に提案。大井川流域市町などでつくる大井川利水関係協議会(利水協)の会員に説明し、理解を求めてきた。併せて、東電RPとも取水抑制の方法や補償などを協議してきた。

 具体的には、JR東海が約9キロあるトンネル掘削工事中に県外流出する水量を測定し、1週間ごとに東電と利水協に報告。東電には実際に放流や取水した水量をJRに報告してもらい、JRが県と利水協に伝えるという。電力の逼迫(ひっぱく)や、降水量が少なくて取水抑制ができない場合は、あとで調整したり、渇水期を避けて掘削工事を行ったりするという。

 取水抑制は東電が行う。ダムの放流ゲートを倒して河川維持で決まった流量に県外流出量を加えた水量を大井川に流す。それと同時に制水ゲートを立ち上げ、水力発電用に1秒あたり最大4・99立方メートル取水する水量から県外流出量を差し引いた量を取水する。

 こうした方法について大井川流域市町からは特に反対意見は出なかったことから、JRはこの日、利水協の事務局を務める県に対し、利水協の正式な了承を求める文書を渡した。

 利水協に加盟する島田市の染谷絹代市長は取材に対し、「JR東海と東電がまとまったことは一歩前進で、大変うれしい。やっとここまでたどりついた、との思いだ」と評価。その上で「利水協が建設的な議論を重ねて、できるだけ早く関係者の同意が得られることを期待している」と述べた。(田中美保、床並浩一、林国広)…

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