第1回透ける「優生思想」 性同一性障害特例法にみる日本の現在地

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聞き手・二階堂友紀

 トランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるには、生殖能力を失わせる手術が必要と定めた性同一性障害特例法の「生殖不能要件」について、最高裁大法廷が「憲法違反」との判断を示しました。青山学院大学の谷口洋幸教授(国際人権法、ジェンダー法)に、世界の潮流を踏まえた日本の現在地を聞きました。

 ――最高裁の判断をどう評価していますか。

 法律が制定されてから20年間の社会情勢を慎重に踏まえた順当な判断だと思います。特に、生殖不能要件がトランスジェンダーの人たちに「過酷な二者択一を迫るもの」であると認定したことは、現在の国際人権基準の一般的な理解とも合致しています。大法廷で15人の全員一致による違憲判断であったことも、人権を実現する国の機関として適切な態度だと考えます。

世界では15年から一気に撤廃

 ――最高裁第二小法廷は2019年、別の家事審判で、生殖不能要件について「現時点では合憲」と判断していました。

 19年の時点でも違憲と言えたはずです。14年には世界保健機関(WHO)などが、不妊化手術の強制は人権侵害だとして廃絶を求める共同声明を出しました。欧州人権裁判所は17年、生殖不能要件は欧州人権条約違反だと判断しました。ニュージーランドやウルグアイ、台湾、香港などでも人権侵害性を認める判決が相次いでいます。

 こうした中、世界では15年前後から生殖不能要件の撤廃が一気に進んでおり、日本がそうした潮流から外れる正当性はなかったと考えます。

 ――世界では、どういう考え方から生殖不能要件の撤廃が進んだのですか。

 日本も批准している国際人権規約16条に「法律の前に人として認められる権利」が定められ、「アイデンティティーの法的承認を受ける権利」が保障されています。性自認に合わせた性別の登録は当然認められるべきで、そのために不当な要件を課すべきではないというのが基本的な考え方です。

 それに加えて、生殖不能要件は、人格の決定的な要素である性自認の法的承認と引き換えに、自分の体のことは自分で決めるという「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」を奪い、性別に関する自己決定権を侵害していると言えます。

「劣等な人たち」と位置づけ

 ――日本の性同一性障害特例法は、議員立法として03年に成立し、04年に施行されました。当時としてはやむを得なかったのでしょうか。

 当時は、性別変更の制度があ…

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この記事を書いた人
二階堂友紀
東京社会部

人権 LGBTQ 政治と社会

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