鳥取西高が創立150年 卒業生5万人以上、高校野球地方大会も皆勤

清野貴幸
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 鳥取県立鳥取西高校(鳥取市)が10月28日、創立150年を迎える。藩校・尚徳館の精神を受け継いだ「文武併進」の教育方針の下、県内で最も歴史ある高校として約5万6千人の卒業生を送り出してきた。

 鳥取市のとりぎん文化会館で25日、創立150周年の記念式典があり、全校生徒や関係者が節目を祝った。卒業生でもある国岡進校長は、「これから先も高い志を持ち、日本や世界の未来を創造する存在であるよう新たな歴史と伝統を重ねていきたい」とあいさつ。今年度前期の生徒会長を務めた田中陽登(はると)さん(2年)は、「興味がある何かに挑戦し、可能性を広げる場が大きく開かれているのが西高の素晴らしいところ」と学校生活を紹介した。

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 鳥取西高校は幕末から間もない1873(明治6)年に開校。校舎は鳥取城跡の高台にあり、約840人の生徒が学んでいる。

 「数学が突出してできるとかピアノがやたらうまいとか、一芸に秀でた生徒が多く、それを互いに認め合う環境がある」。国岡校長が校風を説明する。

 部活動の加入率は2022年度が93%。その割合は年々高くなり、近年は文化部に入る生徒が多いという。全国的なコンテストに出場する生徒が令和以降急増し、22年度は53人が入賞した。

 今春の国公立大の合格者は現役、浪人合わせて229人で昨年より40人以上増えた。一方で、受験のためだけにとどまらない教育のありようも模索している。

 文理融合型探究学習として10月上旬から約10日間、1、2年生計8人がラオスを訪れ、水環境や持続可能な観光などの課題を視察した。引率した中村秀司教諭によると、生徒たちは、現地の人が「日々を幸せに生きている」と実感。日本が常に支援する側という先入観の誤りにも気づかされた様子だったという。「なぜ学ぶのかがリアルに分かる機会になった」

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 150周年記念事業実行委員会が30日まで県立図書館で開いている特別資料展の入り口には、土が付いた野球のボールが展示されている。1915(大正4)年に開かれた第1回全国中等学校優勝野球大会で、前身の鳥取中が広島中を破った開幕戦のウィニングボールだ。

 鳥取中の鹿田一郎投手は朝日新聞社長による始球式に続いて大会第1球を投げ、最初の勝利投手となって歴史に名を残した。

 それから108年後の今年7月、105回目となった全国高校野球選手権記念大会の鳥取大会で、鳥取西は甲子園まであと1勝に迫っていた。8年ぶりの決勝は接戦。連覇を狙う鳥取商相手に3投手が粘り強く投げたが、15年ぶりの大舞台には届かなかった。

 「生徒は力を出し切ったと思う」。10月半ば、新チームが練習するグラウンドで浅田真一監督は語った。鳥取大会で主力だった3年生は入学時から粒ぞろいで期待していた。準々決勝、準決勝を1点差で競り勝って手応えを感じ、コロナ禍明けで復活したスタンドの声援も力になった。決勝の応援には全校生徒の半数近い約400人が米子市の球場まで足を運んだ。

 鳥取西は第1回から地方大会に参加を続けている全国15校の「皆勤校」の一つ。甲子園には春夏合わせて27回出場している県内屈指の伝統校だ。

 野球部OBの浅田監督はやはり、節目の年の甲子園出場への期待を周囲から感じ取っていたという。同じく意識したという前主将、岡本創太さん(3年)は「他校と比べ多くのOBがいる。甲子園に出ることで恩返しがしたかった。決勝の試合には負けたけど、全員が最後まで出し切った」と振り返った。

鳥取西高校の歩み

1873年 第四大学区第十五番変則中学として開校

  81年 県鳥取中学校に改称

1909年 県立鳥取中学校に改称

  22年 県立鳥取第一中学校に改称

  48年 県立鳥取第一高校(学制改革)

  49年 県立鳥取第三高校、県立鳥取商業高校と併合し県立鳥取西高校に

2023年 創立150年

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