それは本当に「自分の意思」か? 星野智幸さんが思う「自分らしさ」

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聞き手・田中聡子
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 「自分らしさを大切に」「自分らしく生きよう」といったメッセージを目にすることがあります。では、「自分らしさ」とは何なのでしょうか。著書「俺俺」で他人との違いが消えた世界を描いた小説家の星野智幸さんに話を聞きました。

    ◇

「選んだ」ではなく「選ばされた」

 「自分らしさ」というものがそもそも存在するのか、自分と他人を分ける境界なんてあるのか――。僕はそんなことを考え続けています。

 買い物に行けば、「自分の意思」で商品を選んだと思います。でも、実はブームの商品だったなんていうことがしばしばあり、「選んでいたのではなく、選ばされていたんだな」と気付かされます。僕が書いてきた小説も、後から振り返ると「ああいう時代だったからこれを書いたんだな」と思うものは多い。「自分の意見」も、誰かの受け売りかもしれない。

求められるのはポジティブな自分

 どこまでが自分の意思で、ど…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年10月29日11時15分 投稿
    【視点】

    “自分らしく生きるための意思決定ができるか”という個人の問題ではなく、“自分らしく生きるための意思決定を支える環境があるか”という社会の問題に焦点を当てて“自分らしく生きたい”と思いにくくさせる社会的圧力を取り除いていく方へと社会が向かって

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    田中宝紀
    (NPO法人青少年自立援助センター)
    2023年10月30日20時42分 投稿
    【視点】

    「もっといい加減に、楽に生きていきたい」 星野さんの言葉に、はっとします。 教育の場では、子どもに「らしさ」をいかに見出させるか、のプレッシャーが年々高まっているように感じます。それも、早期化していて、子どもの頃から「キャリア教育」の名

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