第1回唯一のレアアース鉱山が復活 中国依存脱却へ、米国で進む大転換とは

有料記事アメリカ大統領選2024 覇者の焦り

マウンテンパス=榊原謙
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 追いかけてくる中国への依存を断ち、振り切らなければならない。いま米国を駆り立てるものを象徴する現場が、カリフォルニアのモハベ砂漠にある。

 乾いた坂を車で上ると、眼下に円形の巨大なくぼみが広がった。直径820メートル、深さ180メートル。見下ろすと、足が震えた。

 北米で唯一レアアース(希土類)が採掘・加工されるマウンテンパス鉱山だ。1990年代初めまで世界屈指のレアアースの露天掘り鉱山だったが、その後廃山状態になっていた。

【連載】アメリカ大統領選2024 覇者の焦り

来年に大統領選を控えるなか、混迷をきわめる世界と向き合わなければならない米国。外交を動かす底流となってきたのが、冷戦終結後に手にした覇権が揺らいでいるという「焦り」の感覚です。その実像を描きます。

 「この産業は、中国に支配されてきた」

 2017年に鉱山を買収し、再び生産を始めたMPマテリアルズのマット・スラスチャー上級副社長は言う。

 レアアースの採掘や加工には人手がかかり、環境負荷も大きい。米国は「世界の工場」中国に生産を委ね、レアアース化合物・金属の輸入の9割を頼った時期もある。

 「単純化されすぎた市場の効率性の名のもとに、戦略物資のサプライチェーン(供給網)は海外へ流出した」

 4月、バイデン政権の司令塔、サリバン大統領補佐官は講演で、過去数十年間の政策を厳しく総括した。一度手放した供給網を、安全保障のために取り戻す――。そんな政策目標を、サリバン氏は「新ワシントン・コンセンサス」と名付けた構想の中核として示した。

 冷戦終結後、米国はグローバル化を主導し、貿易や投資の自由化を推し進めた。経済的な相互依存の深まりが中国の民主化を促す、という期待も根底にあった。

 しかし、中国は民主化しなかった。米国が対テロ戦争リーマン・ショックで疲弊する一方で、中国が経済的にも軍事的にも急速に台頭した。

非難を浴びせ合うバイデン氏トランプ氏も、通底しているのが中国への脅威の認識です。記事後半ではレアアースだけでなく、半導体分野にも再び力を入れる米国の姿を報告します。

■レアアースを「武器」として…

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