JR山口線の魅力、再発見しよう 全線開通100周年で企画展

山野拓郎
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 今年で全線開通100周年を迎えた山口線の魅力を再発見してもらおうと、企画展「小郡黒鐵(くろがね)黄金時代」が山口市小郡文化資料館で開かれている。一部区間は利用者の落ち込みが顕著だが、同館側は「魅力を再発見して一人でも多くの人に乗ってもらうことで、山口線を未来につなげていく一助になれば」と話す。

 山口線は、1923年に小郡駅(現・新山口駅)から益田駅まで全線が開通した。同館の山田千里・文化財専門員によると、蒸気機関車(SL)の全盛時に石炭や水の補給場だった小郡機関区は、西日本最大級の貨物輸送の中継基地として全国に知られた存在だったという。

 企画展を訪れた同市の重田克美さん(81)は、若いころに機関助士として働いていたという。「とにかくものすごい重労働で、いつも汗で作業服に塩がふいていた」と振り返る。

 蒸気機関車のナンバープレートや国鉄時代に実際に使われていた鉄道員の制服、戦前から昭和40年代の切符、昭和39(1964)年の小郡駅の組織図などが並ぶ。また、「小郡駅」の駅名をめぐる旧山口町と旧小郡町の攻防が明治時代から続き、「新山口駅」になるまでの経緯を年表を使って詳しく説明している。

 大正時代に造られ、水の供給で鉄道を支えたれんがのダム「旧桂ケ谷貯水池堰堤(えんてい)」(国登録有形文化財)についての展示もある。

 山陽と山陰を結び、地域を支えてきた山口線だが、乗客数の低下は深刻だ。JR西日本は昨年4月、コロナ禍前の2019年度の実績を元に、輸送密度(1キロあたりの1日平均乗客数)が2千人未満の赤字路線を公表。その一つに山口線の宮野~津和野の区間(47・4キロ)が含まれた。輸送密度は19年度が678人、今年公表された22年度実績は495人だ。

 国の有識者会議は、路線の「あり方」を議論するべきローカル線の条件の一つに「輸送密度1千人未満」を挙げる。一方で、特急が走る「基幹的」な路線はその議論の対象外とする方針も示しており、当面、山口線の存廃が取り沙汰されることはなさそうだが、厳しい状況に変わりはない。

 山田さんは山口線の魅力を「自然豊かな田園風景と急勾配に挑む車両の力強い走り」と語る。「鉄道にかけた先人の思いをくみ取って頂くことは、山口線の魅力を再発見することにつながると思う」

 11月26日まで。月曜休館。入場無料。問い合わせは同館(083・973・7071)。(山野拓郎)

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