第5回旧統一教会の解散請求、地裁どう判断 元裁判官「決め手は継続性」
文部科学省が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求したことを受け、今後は東京地裁が、非公開の審理で文科省側、教団側の主張を聞き、解散を命じるかどうか判断することになる。裁判所の判断のポイントについて、元裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授(刑事法)に聞いた。
――宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがある場合、裁判所が宗教法人の解散を命じられると定めています。地裁はどのような点を重視して判断するのでしょうか。
文科省が説明していますが、やはり高額献金などの被害をめぐり、教団の「組織性」「悪質性」「継続性」を認定できるかどうかだと思います。過去に「法令違反」を理由とする解散命令が確定したオウム真理教、明覚寺の2例とは異なり、旧統一教会の問題は最高幹部が刑事事件で摘発されていないため、この2例はあまり参考にならないのではないでしょうか。
――憲法が保障する「信教の自由」に関わる問題です。
信教の自由は大事な価値です。政治権力が特定の宗教と結びついて他の宗教を弾圧した歴史を踏まえ、日本を含めた世界各国で、世俗の権力と宗教の活動を切り離しましょうという基本的な考え方があります。
一方で、宗教団体が暴走した場合、世俗の権力が関与しないと人権を守ることができません。
そうした事情を踏まえ、宗教法人法は解散命令という権力の行使を認めつつ、抑制的に行使させる形をとっています。
条文で「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」とありますが、政府が「伝家の宝刀」を乱用しないよう、「著しく」「明らか」と限定しています。
民法の不法行為も「解散命令の対象に」
――「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」の「法令」に民法が含まれるかという論点もあります。
ふつうに考えれば含まれると思います。たとえば会社法824条は会社の解散命令の手続きを定めていて、会社の権限の逸脱や乱用のほか「刑罰法令に触れる行為をした場合」としていますが、宗教法人法はこうした限定した書き方になっていません。民法上の不法行為であっても、被害金額が大きければ解散命令の対象にはなってくるはずです。
ただ、刑事事件の場合、警察や検察が強制捜査をして証拠をがっちり集められるのに対し、民事事件ではあくまで当事者同士の争いであり、どこまで証拠を集められるかという問題はあります。
――「組織性」「悪質性」「継続性」についてはどう考えますか。
まず悪質性について。損害賠償請求訴訟で判決が支払いを命じた額や和解による賠償金額が大きく、被害者の数も多いうえ、先祖の因縁を持ち出して不安をあおって献金させるなどの手口も悪質ですし、信者の家族や2世信者も大変な苦しみを味わっている。悪質性に関しては、認められるのではないかと思います。
組織性に関しては、文科省が170人以上の被害者への聞き取りで、被害の共通性を証明しようとしています。同じような被害を丹念にひとつひとつ積み重ねることで、個々の信者の独断ではなく、「組織的だったとしか考えられない」という推認を裁判所に求めるとみられます。
「誰々から指示されました」という供述があればわかりやすいのですが、たとえば刑事裁判の暴力団の事件で、直接的な証拠がなくても間接的に幹部の指示を立証するケースはあります。今回集めた被害者の証言はかなりの数だと言えますし、重みがあるのではないでしょうか。
最大の焦点は
最後に継続性ですが、今回の…