始まりは1人だった 「一票の格差訴訟」半世紀の闘いが選挙を変えた
「一票の格差訴訟」と呼ばれる裁判がある。
衆参の国政選挙があるたび、二つの弁護士グループが全国で一斉に裁判を起こす。追い求めるのは「投票価値の平等」。そのために、「不平等な状態で行われた違法な選挙を、裁判所が無効にせよ」と要求し続けてきた。
始まりは半世紀以上前にさかのぼる。
当初は「荒唐無稽な主張だ」と感じる人もいた。しかし、実際にこの裁判は司法を動かし、国会に選挙制度改革を実現させてきた。
弁護士らはなぜ、訴訟を起こすようになったのか。そしてなぜ、これほど長く闘い継がれる裁判になったのか。
訴訟が最初に起こされたのは1962年。始めたのは、当時29歳だった1人の司法修習生だった。
越山康さん(故人)。弁護士になってからも訴訟を続け、同志を集めた「越山グループ」を率いて道を切り開いた先駆者だ。
3度目の挑戦で司法試験に合格し、「法曹の卵」の司法修習生として、62年春から東京地裁で修習を受けていたある日、配属された民事部の部長だった裁判官から米誌「ニューズウィーク」を渡された。
雑誌には、米国の連邦最高裁が同年に出した判決が紹介されていた。「一票の格差」を生む選挙区割りの不平等について、政治的問題ではなく、裁判所が司法判断できると認めた。そんな内容だった。
有権者の1票、実は「0.5票」?
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