撤回の「留守番禁止」条例案、なぜ出てきた? 自民県議団の内部事情

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西田有里 山田暢史 黒田壮吉
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 埼玉県虐待禁止条例の改正案が13日、埼玉県議会の本会議で正式に撤回された。子どもだけの登下校や短時間の留守番も「虐待」とする内容に、「子育てができない」と批判が渦巻いた。そもそもなぜ、こんな条例案が出てきたのか。

 この日は午前10時すぎから本会議が始まった。議長が、自民党県議団の田村琢実団長ら52人から撤回請求が出されたとし、「条例が運用されるにあたってはその趣旨が十分に理解され広く社会に受け入れられる必要があるためとの理由により、議案を撤回したい旨の請求がありました」と説明。異議がないか尋ね、承認された。

 傍聴席からは「田村やめろ」「責任取れ」などの声が飛んだ。

 条例を提案した自民県議団は、2010年から毎年のように条例案の単独提案を続け、8割超にのぼる35件が成立。「県虐待禁止条例」もその一つで、17年に成立した。

 議会事務局によると、埼玉県では02年から今年3月までに議員提案により制定・改正された条例が計41件あり、全国の都道府県議会でもトップだという。

 昨年は、性的指向や性自認を理由とした不当な差別的扱いを禁じる「性の多様性を尊重した社会づくり条例」を提案。成立した。

「空気、異様だった」

 また、これまで家族などの介護や世話を担う人を支える「ケアラー支援条例」(20年)、エスカレーターを立ち止まって使うよう義務づけた「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」(21年)、「ひきこもり支援に関する条例」(22年)といった「全国初」の条例も提案・成立させてきた。

 今回の改正案も、成立すれば…

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2023年10月15日0時46分 投稿
    【視点】

    なるほど、埼玉県議会は議員提案による条例制定や改正を、むしろ活発に行なってきたところだったのか。熱心に活動している個人や団体が、だんだんと詰めが雑になり、変なことをおこなうようになってしまうのは、条例制定に限らずよくある話。しかも児童虐待と

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    山下剛
    (朝日新聞横浜総局次長=医療的ケア児)
    2023年10月14日21時42分 投稿
    【視点】

    4年前の話で恐縮ですが、議員提案条例の取材で埼玉県議会を訪れたことがあります。2019年の統一地方選の直前のことです。 この記事にもありますように、当時から埼玉県議会は議員提案条例の数が全国の地方議会のなかで飛び抜けて多く、その中心を

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