クマタカなど希少種への影響も 川辺川流水型ダム 国交省が発表

大貫聡子
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 国土交通省は31日、川辺川への流水型ダム建設や、実際に水をためて安全性を確認する試験湛水(たんすい)などで予測される流域環境への影響と対策案を公表した。環境の変化により、希少種クマタカの繁殖成功率が低下したり、コウモリなどが生息する洞窟「九折瀬(つづらせ)洞」(五木村)の一部が生き物の生息に適さなくなったりすることが予想されるという。

 この日、学識経験者でつくる「流水型ダム環境保全対策検討委員会」が開かれ、資料が公表された。

 クマタカは、行動圏が一部冠水することやダム関連工事の影響で、繁殖成功率の低下が予想されるという。国交省は、繁殖に影響をあたえる時期の工事の一時中断や、低騒音・低振動の工法を採用すること、営巣地に不必要に立ち入らないことなどを盛り込んだ環境保全措置案を示した。

 また九折瀬洞の一部も冠水し、テングコウモリなどのコウモリ類、イツキメナシナミハグモやツヅラセメクラチビゴミムシなどの希少な昆虫などの生息に適さなくなるとして、洞内への水の流入を阻害したり、冠水しない地域への移植をしたりするなどの措置を検討するという。

 ヤマセミの行動圏については、冠水期間が短く生息環境の変化は小さいと考えられるとしたが、委員からは「ヒナなど飛べない状態の時期に冠水した場合はどうなるのか」といった質問が出た。

 2008年の川辺川ダム建設計画の白紙撤回後に旧水没予定地に整備された五木源パークや「渓流ヴィラITSUKI」も試験湛水などによる冠水で施設の一部が利用できなくなることが予想されるという。

 川辺川へのダム建設は環境影響評価法の対象外だが、国交省は同等の手続きをするとしている。検討委での指摘を盛り込み、同法における準備書に相当する「準備レポート」を近く公表する予定。その後、住民への説明会や、県知事や流域の市町村長、一般からの意見を募る手続きに入る。

 検討会後、委員と意見交換した五木村の木下丈二村長は「今後公表される準備レポートや説明会を踏まえ、村長としての意見を出したい」としている。(大貫聡子)

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